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《優勝賞金1500万円の女流タイトル》「初の女性棋士」目前だった西山朋佳と、里見香奈に勝利した渡部愛… 2人が涙した日と「白玲戦」
posted2021/10/14 11:15
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
LPSA
不動産会社のヒューリックは、社会貢献活動として将棋界の振興に力を入れている。プロ公式戦の棋聖戦を特別協賛し、昨年10月には8つ目の女流タイトル戦の「白玲戦」を創設した。
その棋戦の特徴は、A級~D級の4クラスに分けてリーグ戦を行う「女流順位戦」の実施にある。ほかの女流7タイトル戦の予選はいずれもトーナメントで、1回戦で敗れると1局しか指せないことが多い。
一方、白玲戦では、各リーグ戦で1人あたり8局~9局を指せる。
プロ公式戦の「順位戦」は名人戦の予選リーグに当たり、戦後まもない1946(昭和21)年に創設された。棋士たちは昇級昇段や棋士生命をかけて必死に戦ってきた。それが勝負のドラマを生み、棋士全体をレベルアップさせた歴史があった。
白玲戦の主催者は、それを念頭に入れてリーグ戦方式にしたそうで、「女流棋士にはもっと強くなってほしい」と語っている。女流棋士たちも対局数が増えて喜んでいる。
女流タイトル戦として初の七番勝負
第1期白玲戦は、創設時の64人の女流棋士(休場者を除く)を段級などを基にして、暫定的に8クラスに分けてリーグ戦を行い、各クラス1位の計8人が最上位のトーナメントに進出した。そのうち6人がタイトル戦の経験者で、ほぼ予想どおりの顔ぶれとなった。
有力な優勝候補は、タイトル保持者の里見香奈女流四冠(清麗・女流名人・女流王位・倉敷藤花)と西山朋佳女流三冠(女王・女流王座・女流王将)。しかし、里見が準決勝で渡部愛女流三段に逆転負けした波乱が起きた。一方の西山は順当に勝ち進んだ。
その結果、初代の白玲位は西山女流三冠と渡部女流三段で争われることになった。
白玲戦は、女流タイトル戦で七番勝負(1日制・持ち時間は各4時間)が初めて導入された。優勝賞金は1500万円で、清麗戦の700万円を大きく上回った。
タイトル名の由来は、「《令》和の《王》者が真っ《白》なページに時代を刻む」という趣旨から名付けられた。「真っ《白》な場所で《令》和の《王》者を目指す」という意味もあった。
白玲戦七番勝負に登場した西山と渡部の棋歴を紹介する。ともに涙を流した辛い経験があったが、その背景は異なっている。