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中村憲剛が徹底解説する“なぜ格下オマーンに負けたのか?” 「日本代表が実行しなければいけなかった」2つの打開策
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byJMPA
posted2021/09/06 17:03
なぜ日本代表はオマーンに敗れたのか。元日本代表・中村憲剛氏がその真相を徹底分析する
またこの試合を迎えるにあたり、代表を囲む空気感も、絶対に負けられない最終予選とは言え、オマーンには過去これまで一度も負けたことがなく、ヨーロッパでプレーしている選手の多い日本なら「勝って当然」といった漫然としたものになり、それが周囲に広がり、選手に伝染してしまったのかもしれません。
最終予選でもありますし、選手たちはもちろん頑張ったと思います。ただ、一人ひとりの頑張りが同じベクトルを向いていたかと問うと、いつもの日本に比べるとまとまっていなかった印象です。日本は序盤から動きが重いように見えました。フィジカルを支えるメンタルの充実度も、今回は十分ではないように見受けられました。
しかしながら、ホームゲームでも万全の準備で臨むことができないのは、今回が初めてではありません。それでも勝ってきた歴史があるのですが、今回はしっかりと準備してきたオマーンの戦いの前に屈してしまいました。振り返れば19年のアジアカップでも、カタールとの決勝戦で完敗を喫しました。中東勢が力をつけているのは間違いなく、オマーンもロジカルかつコレクティブにプレーしてきました。
戦術のポイントは「4-3-1-2をいかに崩すか」
オマーン戦を戦術的に紐解くと、ポイントは「オマーンの敷いた4-3-1-2をいかに崩すか」でした。
試合後のイバンコビッチ監督が「丹念に分析をした」と話したように、オマーンは日本を丸裸にしていました。彼らの狙いは1トップの大迫勇也とトップ下の鎌田大地を抑えることで、メインシステムである4-3―1―2の布陣は日本対策におあつらえ向きでした。2CBとアンカーによる真ん中の三角形で大迫を、アンカーとインサイドハーフの3人で鎌田を消してきたのです。
鎌田は相手守備ゾーン間に下りて顔を出し、ボールを受けることでリズムとテンポをつかんでいくタイプです。ところが、彼が使いたいハーフスペースには、アンカーとインサイドハーフの2人があらかじめいる配置でした。オマーンはいつもどおりのやりかたで、大迫と鎌田をブロックすることができていたのです。相手の戦い方がはからずも有効な日本対策になったケースとしては、東京五輪準々決勝のニュージーランド戦と同じでした。
アンカーとインサイドハーフが中央を締めていれば、外は空いてきます。ただ、その対処についても、オマーンはしっかり統制が取れていた印象です。酒井宏樹や長友佑都が低い位置でボールを持っているぶんには、インサイドハーフは自分のポジションに穴を空けてまで出ていかない。穴を開けたら鎌田らに使われるからです。ある程度のところへ来たら出ていきますが、「4」と「3」の組織を極力崩さない形で守備を構築していました。