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「井上尚弥は効いていたと思う。でも…」長谷川穂積がカルデナス戦3つの「なぜ」を読み解く! いつもと違っていた井上の“ディフェンス”

posted2025/05/11 11:09

 
「井上尚弥は効いていたと思う。でも…」長谷川穂積がカルデナス戦3つの「なぜ」を読み解く! いつもと違っていた井上の“ディフェンス”<Number Web> photograph by Getty Images

井上は一貫して攻撃的な戦い方を選択し、いつものように相手のパンチをかわさずにブロックでディフェンスして打ち合った

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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5月4日(日本時間5日)にラスベガスのT-モバイル・アリーナで行われた井上尚弥(大橋)の世界タイトルマッチについてさまざまな意見があふれている。伏兵ラモン・カルデナス(米)を相手に、井上はなぜダウンを喫してしまったのか、なぜあのような戦い方をしたのか、なぜカルデナスは井上を苦しめることができたのか……。「なぜ」を解くべく、元3階級制覇の長谷川穂積さんに聞いた。〈全2回の1回目/つづきを読む

 2階級で4団体統一を果たした井上に無名のカルデナスが挑んだという試合。圧倒的有利を伝えられた井上は快調にスタートを切ったように見えた。長谷川さんは「倒しにいっているな」という目で井上を見つめていた。

自分に期待されているものがわかっていた

「ラスベガスで自分が求められているもの、期待されているものがわかっていたので、自然と気合も入ったんでしょう。前戦(1月のキム・イェジュン戦)、1ラウンド目はほとんど手を出しませんでしたけど、今回はガンガンいってましたね。完全に倒しにいってるなと感じました」

 井上は2回も続けてアグレッシブなボクシングを展開した。そこであのダウンだ。1年前のルイス・ネリ戦で喫したダウン以上にダメージがありそうに見え、モニターの前で凍り付いたファンがどれほどいたことだろう。

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「自分が攻めていったところで正面衝突のようにもらいましたから効いたと思います。もらった理由はいろいろあるでしょうけど、やっぱり攻めていってますから。それでスキができたということだと思います」

井上といえども攻める瞬間は脇が開く

 攻めなければ勝てないのがボクシングだし、攻めたらスキができるのがボクシングだ。井上といえども、攻める瞬間はスキができる。

「たとえば強い右ストレートを打とうとしたら、教科書通りグローブをアゴの位置に置いて、そこから打つというふうにはならないんです。全力で打とうとしたら振りかぶる。グローブはアゴよりも下、胸元くらいから打つし、逆の手のガードも脇が開く。人間の構造的にグローブをがっつりアゴにつけて、脇を締めてというのは無理なんです。そこをカルデナスが狙ったのかどうかは分かりません。井上選手はこれが3度目のピンチでしたけど、ドネアのときもネリのときも同じようなもらい方でした」

【次ページ】 井上は打たれ強くはない。でも…

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