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中村憲剛が徹底解説する“なぜ格下オマーンに負けたのか?” 「日本代表が実行しなければいけなかった」2つの打開策
posted2021/09/06 17:03
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph by
JMPA
まさかの敗戦は、実は必然だった。
9月2日に行なわれたカタールW杯アジア最終予選の開幕戦で、日本はオマーンに0対1で敗れた。
苦戦が予想される材料はあった。冨安健洋と守田英正が合流できず、板倉滉がケガで離脱し、南野拓実もケガで出場できなかった。オマーンが約1カ月前からキャンプをしていたのに対して、日本は実質1回の全体練習で試合に臨んだ。
それにしても、である。敗戦は受け入れがたい。
元日本代表として南アフリカW杯に出場し、最終予選の出場経験も持つ中村憲剛氏に、オマーン戦を解析してもらう。敗戦の真相を整理しつつ、来る中国戦を展望してもらった。
◆◆◆
オマーンと日本で違った「試合に臨む背景」
最初に触れたいのは、両チームの試合に臨む背景です。
オマーンは昨年1月にブランコ・イバンコビッチ監督が就任し、一貫して4-3-1-2のシステムで戦ってきました。そのうえで、8月からのキャンプで自分たちの戦いかたを再確認し、練り上げ、セットプレーもデザインした形を複数用意していました。事前に長期キャンプを実施し、練習試合を挟みながらチームを構築していくという意味では、東京五輪に臨んだ時のU-24日本代表の準備の仕方に似ていたと言えるでしょう。
それに対して日本は、週末の各国リーグ戦が終わってからの段階的な合流になったことで、全員揃っての準備期間が短かったばかりか、メンバーの入れ替わりがありました。夏場の過密日程を消化中の国内組と、シーズンが始まったばかりの海外組では所属クラブでの試合の消化数はまちまちで、総じてコンディションはベストと言えず、選手によってバラつきもあったと考えられます。
また、試合の環境もこれまでの最終予選とは違いました。コロナ禍のため観客は上限5000人で、サポーターは声を出しての応援ができない。過去の最終予選の初戦では大観衆の声援が選手を後押しし、それが相手への圧力となり、終盤に劇的な得点が生まれてきたという歴史があります。そのスタジアムの雰囲気、選手たちの熱量やパッションが、テレビの画面越しから感じられたものでした。今回は仕方のないこととはいえ、これまでのようなその「熱」が上述の理由により、作り出せなかったのではないかと思いました。