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《13年ぶりに五輪で金メダル》なぜパラ競泳・鈴木孝幸は 引退も考えた“リオの惨敗”から立ち直れたのか

posted2021/08/27 17:04

 
《13年ぶりに五輪で金メダル》なぜパラ競泳・鈴木孝幸は 引退も考えた“リオの惨敗”から立ち直れたのか<Number Web> photograph by Getty Images

26日のパラ競泳男子100m自由形にて、北京大会以来13年ぶりの金メダルを獲得した鈴木孝幸。

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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 3大会ぶり、13年ぶりの頂点だった。

 8月26日、東京パラリンピックの競泳男子100m自由形(運動機能障害S4)が行なわれ、鈴木孝幸が優勝した。

 午前中の予選を全体2位で通過すると、決勝は前半、ルイジ・ベジャト(イタリア)に僅差の2位で折り返す。残り10mあたりで追いつくと、そのまま抜き去り、トップでタッチ。前日の50m平泳ぎ(SB3)での銅メダルに続く今大会2つ目のメダルは、2008年北京大会以来となる金メダルでもあった。日本競泳としても、2大会ぶりの金メダルである。

「自分の中では粘るという感じでした。向こうの方が先に落ちてくれて、結果的に競り勝ったというか追い抜いたというかそういう感じです」

 レースの最後の場面を、鈴木はそう振り返っている。

 前半から、自己ベスト以上のハイペースで泳いでいた。まさに粘りの勝利だったろう。

「北京の金メダルは、ほぼ忘れています」

 久しぶりの表彰台の真ん中への思いは、新たな思いを募らせた。

「北京の金メダルは、ほぼ忘れています。また新しい気持ちで金メダルをもらえたような感覚になっています。まったく、別ものです」

 現在は34歳、2004年のアテネから5大会目のパラリンピックだった。2012年のロンドンまでに金1、銀1、銅3のメダルを獲得した。

 29歳で迎えたリオデジャネイロ大会でもメダルへの期待を寄せられた。鈴木自身も再びの世界一を視野に入れ、臨んだ。

 だが大会では、初めてメダルなしに終わる。北京以降、世界記録を保持していた50m平泳ぎ(SB3)では記録を破られ、4位。最後の種目、100m自由形(S5)で11位、決勝に進めずに終えたあと、鈴木は語った。

【次ページ】 リオ大会、メダルへの期待の中よぎった「引退」

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