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「種牡馬になれる牡馬は5%」では“なれなかった”競走馬はどうなる? スターホースだらけの相馬野馬追、武豊騎乗でGIを勝ったアノ馬も
posted2021/08/29 11:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Akihiro Shimada
種牡馬、繁殖牝馬、乗馬、誘導馬、リードホース、功労馬、養老牧場、リトレーニング、肥育、被災馬、相馬野馬追、RRC(Retired Racehorse Cup)。
これらに共通して関連するのは、何か。そう、「引退競走馬」である。
サラブレッドは無事なら20年以上生きる。国内の最長寿記録は2019年8月に世を去ったシャルロットの40歳2カ月20日。存命中の最高齢GI馬は、1993年のダービー馬ウイニングチケットで、31歳である。
怪我がなく、繁殖馬としての道が用意されていれば、5歳か6歳まで走って引退するのが普通だ。つまり、サラブレッドが競走馬として過ごすのは、長い「馬生」のほんの前半部分なのである。
競走馬を引退したあとの、第二、第三の馬生のほうがずっと長い。種牡馬や繁殖牝馬、誘導馬など、ファンの目に触れたり、動向がメディアを通じて伝わってきたりする一部の馬以外は、どんな余生を過ごしているのか。
その一端を、7月末に福島県相馬市と南相馬市、浪江町で行われた伝統の祭「相馬野馬追」で目にすることができた。
今年総大将が騎乗したのは、NHKマイルを制したロジック
相馬野馬追は千年以上の歴史を持つ世界最大級の馬の祭で、例年、400頭から500頭ほどの馬が参加する。今年はコロナ禍のため縮小開催となり、目玉の甲冑競馬や神旗争奪戦は行われず、7月24日(土)に相馬市と浪江町で合計90騎ほどの騎馬武者による行列と、26日(月)に相馬小高神社で上げ野馬の神事が行われるにとどまった。
それでも、「え、この馬がここにいたの!?」とビックリするようなスターホースの元気な姿を見ることができた。先に記すべきだったかもしれないが、相馬野馬追に出陣する馬の9割ほどは元競走馬なのである。
5年連続で総大将をつとめたのは、相馬氏第33代当主・相馬和胤(かずたね)さんの長男である相馬行胤(みちたね)さんだった。その相馬さんが騎乗し、相馬市内を行列したのは、2006年に武豊の手綱でNHKマイルカップを制したロジックだったのである。