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「種牡馬になれる牡馬は5%」では“なれなかった”競走馬はどうなる? スターホースだらけの相馬野馬追、武豊騎乗でGIを勝ったアノ馬も
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byAkihiro Shimada
posted2021/08/29 11:00
7月24日に開催された騎馬武者行列。合計90騎が列をなした
種牡馬になれなかった馬は「乗馬になる」と言われるが…
しかし、ここに紹介したのは、恵まれた余生を過ごしている、ごく一部の馬たちである。
最近は北海道の馬産地などにも養老牧場が増えて、元競走馬の受け皿がひろがりつつあるが、それでも現実は厳しい。
現役引退後、種牡馬になれる牡馬はおそらく5パーセントもいない。繁殖牝馬のほうが門戸は広いとはいえ、あくまでも目安だが、2~3勝はしないと故郷の牧場に戻ることはできない。
残りの馬の大多数は「乗馬」になる、と発表される。実際、乗馬として乗馬クラブなどに行く馬もいるが、ほどなく行方がわからなくなる馬のほうが多い。私たちの周辺を見回して、近隣に乗馬クラブがどのくらいあるか確かめてもらえば、おわかりいただけると思う。
それらの馬は肥育業者の手にわたり、食肉として流通する。日本人は昔から馬を食べるし、肥育を生業にしている人々もいるのだから、私はそれを否定するつもりはない。フランスやイタリア、カザフスタンなどでも、馬は食用にされている。
生産者も、馬主も、調教師も、厩務員も、調教助手も、騎手も、そしてJRAなどの主催者も、自分たちを食わせてくれた馬の「その後」を気にかけながらも、すべてをケアすることは現実的には不可能だとわかっている(引退競走馬を支える活動に参加している関係者ももちろんいるが)。
そうした現実を踏まえたうえで、競走馬としてワクワクさせてくれた馬たちの余生を、自分のできる範囲で見守っていく――今、私たちにできるのは、それだけだ。
また、冒頭に記した「リトレーニング」で乗馬としての訓練を積んだり、賞金の出るRRC(Retired Racehorse Cup・引退競走馬杯)に出場するためトレーニングしたり、若駒たちを落ちつかせるため同じ放牧地で過ごす「リードホース」が多くなったりして、競走馬のセカンドキャリアの道がひろがっている、ということを、最後に付記しておきたい。