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「おじいちゃんが凄い脚を…」ルメールも唸った、藤沢和雄調教師(69)が4年前のキーンランドCで見せた“競馬哲学”

posted2021/08/29 06:00

 
「おじいちゃんが凄い脚を…」ルメールも唸った、藤沢和雄調教師(69)が4年前のキーンランドCで見せた“競馬哲学”<Number Web> photograph by Satoshi Hiramatsu

2017年のキーンランドCを9歳馬エポワスで制した藤沢和雄調教師とルメール騎手

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平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

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Satoshi Hiramatsu

 今週末、札幌競馬場ではキーンランドC(GIII)が行われる。4年前の2017年、このレースを制したのがエポワス(騙、美浦・藤沢和雄厩舎)だ。

 同馬は当時、9歳の古豪。まだ3歳だった11年4月に既走馬相手の未勝利戦でデビュー。阪神競馬場の芝1400メートルだったそのデビュー戦を3番人気で快勝すると、約2カ月後には東京競馬場の芝1400メートルの500万条件に出走。キャリア1戦ながら1番人気に推されると、堂々と連勝を飾ってみせた。

 しかし、3戦目に予定していたラジオNIKKEI賞(GIII)を左肩ハ行で取り消すと、その後は度重なる怪我に泣き、約2年1カ月、半年、8カ月半と何度も長期にわたる休養を経験。去勢もされると、短距離戦を中心に使われ、少しずつ出世していった。

 14年7月には準オープン入り。翌15年には準オープンで2、2、4、2、2着と善戦を繰り返した後、格上挑戦したオープンのUHB賞で見事に1着。当時、7歳ながら札幌競馬場の芝1200メートルを1分7秒5のレコードで快勝してみせた。

 何度も休養を挟みながらこの年齢で勝たせてしまうところに、さすが藤沢和調教師と感じた。これには、何度もあったピンチにも抹消されなかったエポワスも感謝しているのではないか? と思えたものだが、伯楽にその旨を伝えると、かぶりを振って答えた。

「エポワスの場合、体がしっかりすれば走れるようになると思って残したわけだけど、どんな馬でも残しておけば走るようになるというわけではありません。必ずしも成功するとは限らないんです。結局、復帰も出世も出来ないまま終わってしまう馬もいるから、走ってくれたエポワスには逆にこちらが感謝しなくてはいけません」

ルメール「さすが藤沢先生です」

 こうして7歳でオープンをレコード勝ちしたのには驚かされたわけだが、本当に驚かされるのはまだ先の事だった。

 オープン入りしたエポワスは、15年のキーンランドCで3番人気に支持された。しかし、結果は9着。翌16年も同レースに駒を進めたが今度は6着。3年連続での出走となった17年は12番人気での支持でしかなかった。手綱を取ったC・ルメール騎手はレース前、言っていた。

「9歳のおじいちゃんだから、どこまで頑張ってくれるかな? という感じです」

 ちなみに直前のUHB賞は7着に敗れていたが、この時は単勝4・3倍ながら1番人気に推されていた。人気になっていた馬が凡走する事で人気を落とし、今度は逆に好走するというケースはままある。しかし、キーンランドCで12番人気まで評価を下げていたのにはもう1つ、大きな理由があった。

 この時のエポワスの馬体重は496キロ。僅か3週間前の前走と比べて20キロも増えていたのだ。後に藤沢和調教師は次のように語っている。

「『え?!』と思いましたよ。普通に使われているのに20キロ増えるって、全く競馬にならなかったら『何をしていたんだ』って言われちゃいますよね……」

【次ページ】 藤沢「トライアルに勝てば自動的に本番、ではない」

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