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「なぜ女子バスケ日本代表の3Pシュートは“世界一”決まるのか?」193cmエース不在でも“初メダル”まで一気に躍進できた理由
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2021/08/07 20:01
男女通じ初のメダル獲得を決めた女子バスケ代表。準決勝フランス戦での宮澤夕貴(52番)の3Pシュート
また、出身高校を見てみると、
札幌山の手(町田、長岡萌映子、東藤なな子)
桜花学園 (高田真希、馬瓜エブリン、三好南穂)
明星学園 (本橋菜子、オコエ桃仁花)
金沢総合 (宮澤)
聖カタリナ(宮崎早織)
昭和学院 (赤穂)
精華女子 (林)
と、ウィンターカップ、インターハイの常連校の出身者が中心となっていることが分かる。
女子バスケの世界はエリート校の中のエリート選手が、高校卒業と同時にWリーグの企業へと進み、さらにスキルを上げてきたわけだが、今回、白鷗大出身の林、早稲田大出身の本橋というふたりの大卒選手が代表で大きな役割を果たしているも、多様性を表現しているように思う。
「メガバンクを考えています」から女子バスケ代表へ
私は2014年、2015年シーズンと毎週のように関東女子バスケットボールリーグに足を運んでいた。なかなか仕事には結びつけがたかったが、早稲田、白鷗、東京医療保健大、筑波、専修、拓殖と群雄割拠、どの試合も面白かった。
そのなかで本橋は、2015年度の早稲田の主将。彼女は3年時にインカレで優勝したが、4年の春に前十字靭帯断裂の大けがを負い、11月のインカレの最後の試合、筑波戦の最後の場面ではベンチに座ったままだった。
当時の早稲田は卒業後にWリーグでプレーする選手が限られ、一部上場企業で働く選手の方がはるかに多く、本橋も「メガバンクを考えています」と私に話していた。
ところが、4年生での体験が本橋の人生を変えた。Wリーグでのプレーを模索し、2016年に羽田に入ると、失った時間を取り戻すかのように成長を遂げ、2019年のFIBAアジアカップでは優勝、そしてMVPまで獲得した。
今大会、オフェンスが重たくなったところで本橋が投入されるケースが多いが、ゲームに入って躊躇わずに3Pのアテンプトをする本橋には失敗を恐れない強さを感じる。
白鷗大で「いちばん長く体育館にいる選手」
林は本橋より一学年下で、白鷗大の中心選手だった。
福岡の精華女子出身。インターハイでベスト16の経験はあったが、大学で大きく成長した。白鷗大で「いちばん長く体育館にいる選手」(英語でいうところのgym ratだ)で、当時の印象はシューターというよりドライブが得意な選手。しかし2017年にENEOSに入ってからはシュートスキルを磨き、昨季のWリーグでは3P成功率はナンバーワンを誇った。
ベルギー戦、残り16秒での林の逆転の3ポイントを見ると、大学という、これまでは女子バスケ界では遠回りと見なされていた世界で得た経験が生きていると感じ、目頭が熱くなった。