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“苦難と失意の連続”から日本女子バスケが史上最強に… 「東京五輪で金メダルを」宣言が一笑に付されたアメリカ人指揮官の哲学とは
posted2021/08/08 06:00
text by
三上太Futoshi Mikami
photograph by
Naoya Sanuki/JMPA
87-71――思わぬ点差での勝利だった。
東京オリンピック2020女子バスケットボール準決勝。女子日本代表は女子フランス代表に16点差で勝利し、1976年に女子バスケットがオリンピックの正式種目に採用されて以来、初めて決勝進出を決めた。アジア勢としては1992年のバルセロナオリンピックで女子中国代表が踏んで以来の、7大会ぶり3度目の決勝進出である。
これまでオリンピックでは5位が最高成績。準々決勝の壁を破れずにいた女子バスケット日本代表がなぜここまで躍進できたのか。
その答えを探れば、さまざまなところで報じられているが――日本の3ポイントシュートが高確率で決まっていることや、平均身長で劣る日本が“全員バスケット”と表現される組織力で強豪国を凌駕していることが挙げられる。特に193センチの渡嘉敷来夢が右膝前十字靱帯断裂の大怪我に見舞われ、唯一の高さを失いながらもそれまで以上に組織力に磨きをかけていくことになった。
しかしそれらは今に始まったことではない。むしろこれまでの積み重ねの上に今回の躍進を下支えしているといっていい。
久保建英の涙のような悔しさを何度も味わった
「積み重ね」と言えば、ありきたりの答えになるかもしれない。奇しくも彼女たちが決勝進出を決めた同じ日、男子サッカー日本代表が3位決定戦でメキシコ代表に敗れ、久保建英が「今までサッカーをやってきて、こんなに悔しいことはない……この気持ちを忘れないようにできれば」と語ったが、女子バスケット日本代表は久保の言葉をそのまま体現するような経験を重ねてきたのである。
1996年のアトランタオリンピックでは7位に入賞したが、2000年のシドニーオリンピックは、静岡県で開催されたアジア選手権(現アジアカップ)で韓国に敗れ、その道を閉ざされた。