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「なぜ女子バスケ日本代表の3Pシュートは“世界一”決まるのか?」193cmエース不在でも“初メダル”まで一気に躍進できた理由
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2021/08/07 20:01
男女通じ初のメダル獲得を決めた女子バスケ代表。準決勝フランス戦での宮澤夕貴(52番)の3Pシュート
渡嘉敷のゴール下での存在感は欠かせないもので、実際に今大会もディフェンスリバウンドで苦戦している試合もある。
一方、オフェンスではベテランの渡嘉敷に頼る面があり、たとえばショットクロックが残り少なくなってくると、「お願い!」とばかりにインサイドの渡嘉敷にパスを入れることは珍しくなかった。
今回、それが奪われた。どうなったか?
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ショットクロックぎりぎりでの3Pのアテンプトが増えたのだ。
司令塔の町田瑠唯(身長162cm、ただいま世界的に大ブレイク中)と宮澤夕貴、林咲希らのシューターが連動し、時間を使っての3PA、そして成功数が増えた。
大黒柱を失ったことでの戦術の徹底が、思わぬ形で実を結んでいるともいえる。
オフェンスリバウンドの“救世主”
ただ、確率的に10本打っても6本は外れる。3ポイントはシュートの勢い、リングに当たった角度によっては、相手リバウンドからのファストブレイクの危険もある。
日本の泣きどころは、オフェンスリバウンドからのセカンドチャンスを作る機会が少なかったことだ。
一時期ではあるが、ホーバスHCも3PAの後は、全員が自陣に戻るように指示していたほどだ。
しかし今回、救世主が登場した。
FWの赤穂ひまわりが積極的にオフェンスリバウンドにも絡めるようになり、セカンドチャンスも増えた(1試合平均1・6本のオフェンスリバウンド。また、ゴール下へのアタックは小気味よく、絶賛成長中)。
今回、パサー、シューター、そしてリバウンダーというインフラが出来たことで、日本の戦術徹底が可能になったと見る。
女子バスケ界のエリート「高卒→Wリーグ」ではない“2人”
戦術の徹底とともに、指摘しておきたいのが、チームメンバーの多様性だ。
1990年代は代表メンバーのほとんどが、共同石油(現ENEOS)とシャンソン化粧品に限られていた時代もあったが、今はENEOS、トヨタ自動車、富士通、デンソー、トヨタ紡織と多岐に渡っている。