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大坂なおみ、錦織圭は出場も…テニスのトップ選手たちが東京五輪を回避する「コロナだけじゃない」2つの理由
posted2021/07/21 11:03
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph by
AFLO
「私の名前は、リストに載っていないことが判明した。ということは、私は行かないということ」
そんな禅問答めいた物言いで、グランドスラム通算23回の優勝を誇るセリーナ・ウィリアムズが東京オリンピックへの不参加を表明したのは、ウィンブルドン期間中のことだった。
「決断の理由は色々あるけれど、今は話したくない。いずれ、話せる日が来るかも」と報道陣を煙に巻いたが、以前から、家族を同伴できない可能性を懸念してきた彼女である。今や、3歳になる愛娘の母である“4つの金メダリスト”にとって、東京に足が向きにくいのは、十分に理解できることだった。
このセリーナを筆頭に、テニス選手の北米勢には、オリンピックを辞退する向きが強い。
テニスのオリンピック参戦資格は、6月14日時点の世界ランキングによって決まり、一カ国の上限は4人までと定められている。
だが、来日するアメリカ代表の男子トップランカーは、国内4番手のトミー・ポール。
女子でも、国内ナンバー1で世界4位のソフィア・ケニンを筆頭に、セリーナやマディソン・キーズらが出場を辞退している。またカナダでも、男子国内1位のデニス・シャポバロフは早々に不参加を表明。女子ナンバー1のビアンカ・アンドレスクも、ウィンブルドン後に出場辞退を発表した。
トップ選手が「五輪を回避して」北米大会に出る理由
テニスプレーヤーたち……とりわけ北米を拠点とする選手たちが東京行きに二の足を踏む訳は、プロツアーのスケジュールとランキング構造にある。
テニス選手たちは、世界各地を転戦しながら年間で20~25ほどのトーナメントに参戦し、戦績に応じてランキングポイントと賞金を獲得する。
そのポイントと賞金の両面、そして格式や栄誉的にも、大会群の頂点に位置するのが“グランドスラム”もしくは“メジャー”と呼ばれる四大大会。四大大会は毎年行われるが、ランキングポイントは原則1年で消失するため、1大会とも無駄にはできない。
オリンピックの開催時期は、テニス界の“シーズン”で言えば、全仏オープンとウィンブルドンの欧州シリーズが終わり、8月下旬の全米オープンに向けた、季節の変わり目にあたる。全米オープンを重要視する選手ほど、いち早く北米入りして前哨戦シリーズに出場し、気候やコートにも慣れておきたいところだ。