テニスPRESSBACK NUMBER
ジョコビッチは“歴代最高の選手”になるか? 思い出す“絶対王者”フェデラーの苦悩「自分で怪物を作ってしまった」
posted2021/07/12 17:02
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Hiromasa Mano
多くの修羅場を経験してきたノバク・ジョコビッチでも、こんなになってしまうものなのか。硬くなってスイングスピードが上がらないからショットは正確性を欠き、なかでもセカンドサーブは入れるのが精一杯だった。第1セットの立ち上がり、そして、5-3で迎えたサービング・フォー・セットでの緊張ぶりに、彼が挑む記録の重さを思い知らされた。
「歴史が懸かっていることで、緊張してしまったのかも」
このウィンブルドンの決勝には、ロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダルと並ぶ史上最多の四大大会シングルス20勝が懸かっていた。さらに、今年の全豪と全仏を制したジョコビッチには、年間グランドスラム(四大大会全制覇)達成の可能性も見えていた。ジョコビッチ自身、記録の重圧があったことを否定しなかった。
「試合の序盤、特に第1セットはいつもより少し緊張していた。守りに入ってしまう場面もあった。ウィンブルドンの決勝という大舞台、歴史が懸かっていることで、緊張してしまったのかもしれない」
パワープレーで追い込まれていくジョコビッチ
マテオ・ベレッティーニは強敵だった。
サーブとフォアハンドを軸に、パワープレーで挑んできた。攻勢の場面だけでなく、押され気味の状況でも体の強さを生かした質の高い返球ができる。ジョコビッチが相手を追い詰めながら一発逆転のカウンターを食らうという、珍しい場面が何度も見られた。このベレッティーニが第1セットを奪ったことで、試合は白熱した。
だが、ジョコビッチが第2セットを奪い返して1セットオールになると、ファンの不安も少しは収まっただろう。いや、ジョコビッチの視点では、分岐点はもっと早い時点にあったという。「第2セットに入ったときから、試合をコントロールできていた」というのだ。立ち上がりの硬さについてのジョコビッチの談話には、続きがある。