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大坂なおみ、錦織圭は出場も…テニスのトップ選手たちが東京五輪を回避する「コロナだけじゃない」2つの理由
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph byAFLO
posted2021/07/21 11:03
東京五輪出場を表明している大坂なおみ選手
それほどまでに、ランキングポイントの価値を知るジョコビッチは、悩んだ末にオリンピック出場を決意した。その事実は、国を代表して立つ表彰台の中央が、彼の中で如何に高い地位かを物語る。5年前、キャリアの絶頂期で迎えたリオ・オリンピックの初戦で敗れ、涙をぬぐうことなく歓声に応えコートを後にした時から、今への挑戦は始まっていた。2019年には、オリンピックと同会場の有明コロシアムで開催された楽天ジャパンオープンに初参戦し、「オリンピック会場の様子や気温などを少しでも知っておきたかった」と明言した程だ。
テニス人気が低いギリシャのトップ選手は……
ギリシャの国旗を背負う男子のステファノス・チチパスや女子のマリア・サッカリらも、五輪への想いは強い。それは、オリンピック発祥の地を自負する国の出身である以上に、国内のテニスという競技に対する理解度に依るところが大きいようだ。
ギリシャにおいて、テニス人気はもともとそれほど高くなかったという。グランドスラムなどに足を運ぶ取材者も、ギリシャからはたいがい一人だ。
その唯一と言える記者のビッキー・ヨルガトゥ氏によれば、チチパスは先の全仏オープンでグランドスラム準優勝の快挙を成したにもかかわらず、その戦果は、必ずしも正しく評価されなかったという。
「決勝で逆転負けを喫したことで、ステファノスは『メンタルが弱い』『甘やかされて育ったお坊ちゃんだから、根性がない』などの不当な批判を一部から受けた。ウィンブルドンの初戦で敗れた時は、『恥さらしだ』とまで言うテレビのコメンテーターも居た」
そう証言するヨルガトゥ氏は、「もしステファノスがオリンピックでメダルを取れば、彼のギリシャでの評価は一変するだろう」とも予測した。シングルスでのメダル獲得が期待されるチチパスは、サッカリと組んで混合ダブルスに出ることも公言している。