箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「箱根駅伝に出られなかったことが一番悔しかった」 青学大、順大、駒大に次々現れた“下剋上の新勢力”の実力は?
posted2021/06/03 17:04
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Yuki Suenega
箱根駅伝は人を成長させる大会などと言われることもあるが、それは出場した選手に限ったことではなく、その舞台に立てなかった選手にも同じことが言えるかもしれない。5月の関東インカレでは毎年そんなことを思わされる。今年もやはり大会初日のハーフマラソンからそんな印象を持つことになった。
上級生を“新戦力”と称するのはおこがましいかもしれないが、今年の箱根駅伝に不出場だった選手の関東インカレでの活躍を振り返りたい。
「青学の代表としてライバル校には絶対に勝つ」
関東インカレで長距離種目の花形といえば5000mや10000mだろう。ハーフマラソンには、ロードに強い選手はもちろんだが、時間をかけて地道に取り組んできた上級生がエントリーされるケースも多い。
対校戦の関東インカレは、1部校と2部校とに分かれるが、こと長距離種目に関しては、1部校と2部校とで大差はない。年によっては2部校のほうがレベルが高いこともあるほどだ。現に今年は、今年の箱根駅伝を制した駒澤大をはじめ、創価大、青山学院大、帝京大、國學院大、東京国際大と、箱根のシード校の半数以上が2部校にいる。シードを落としはしたが、好選手がそろう明大も今年は2部校だった。
その2部のハーフマラソンで優勝を飾ったのが、青山学院大の西久保遼(3年)だ。西久保は、佐賀・鳥栖工高時代から駅伝では全国大会で活躍し、大学1年時には5000mで13分台に突入している。しかし、強豪・青山学院大ではなかなか活躍の機会はなく、これまで学生三大駅伝ではエントリーメンバーにさえ一度も入ることができずにいた。昨年度は貧血にも苦しんだ。それでも、練習は継続し、3年目の今季、ブレイクしようとしている。4月には10000mで28分21秒39と、チーム2番目のタイムを叩き出し、それまでの自己記録を一気に55秒も更新していた。
「駒澤さんも調子がどんどん上がってきているので、その対抗として“カンカレ(「関東インカレ」のこと)”で強さを見せるのは大事。ライバル校の選手に負けることは絶対にダメなので、青学の代表として絶対に勝つっていうイメージをもって走りました」
そのライバル校の花尾恭輔(駒大2年)をゴール直前にかわし、東京国際大の留学生、ルカ・ムセンビ(3年)や、今年の箱根5区区間賞の細谷翔馬(帝京大4年)をも破って、西久保は初タイトルを手にした。過去にハーフマラソンを制した青学大の選手には神野大地や2年連続優勝の池田生成がおり、池田は4年目に箱根駅伝の9区で活躍した。西久保にも、池田のような燻し銀の走りを期待したい。