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【ドラフト中間予想】野手部門1位正木智也(慶応大)、本人に聞く「早川さん(楽天)から打った二塁打がきっかけだった」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2021/05/26 17:03
筆者が「ドラフト中間予想」で野手部門1位に選んだ正木智也(慶応大)。本人はプロ野球をどのくらい意識しているのだろうか?
レフトとセンターの2人が打球を追わずに、最初からクッションボールを待ち受ける方にまわったほどの、まさに「スーパービーム」だった。正木が振り返る。
「ああいう弾丸ライナーが自分の最大の持ち味だと思ってます。2年生の冬あたりから、インサイドアウトのスイング軌道というテーマをずっと意識し続けていて、インコースを捉えた打球が左中間方向に伸びるようになってきたのも、インサイドアウトのスイング軌道が出来てきているのかもしれない。それまでは、インコースがファウルになっていたり、いい当たりでもドライブがかかったりしていましたから」
正木選手のバッティングを一塁側からの視点で見ていると、アッと思うことがある。
構えたバットを振り始めた次の瞬間、彼の右ヒジがベルトのバックルのあたりに、グイッと食い込んでくるように見える時がある。この時の打球は、たいていが「弾丸ライナー」になって飛んでいく。
「僕には、高校時代からのバッティングの目標があって。3方向へのホームランバッターでありたいんです。今年の春は、リーグ戦前のオープン戦で、右方向へのホームランのほうが多かったんですね。(左への本塁打が出るようになり)3方向っていうのが、ようやく見えてきたかなって。去年の秋の慶早戦で、早川(隆久、現・楽天)さんから打った右中間の二塁打。あのあたりから、だんだんと感覚を掴み始めた感じで。それと、1つの挫折っていうんですか…そこを越えられたのも大きかったと思うんです」
「就活」シーズンの最悪なスタート
昨年秋のリーグ戦、スタートの東京大学戦。正木智也は第2戦の1試合5打席で4三振を喫していた。
「現実的な目標としてプロ野球を意識してましたから、大学3年の秋って、1つの正念場じゃないですか」
大学生の「就活」の時期が早くなって、大学3年のシーズンが終わった段階で、就職なのかプロなのか…大まかな進路選択をする今の大学生選手たち。プロ側も「3年秋」までのプレーぶりで、その後を追いかける選手なのか否か……一応の線引きをして、求められれば伝えることもあるという。
「結果を出してやる!って気持ちばっかりが前に出てしまって、打ち気にはやって、打てないボールまで追っかけてしまって。そこで気づいたのが、プロのバッターも、打ってるのはピッチャーの失投なんだってことなんです。投げ損じて甘く入ってくるボール……プロの一軍では少ないですけど、そのわずかな失投を逃さず捉える。学生の今のうちからそれが出来ないとって。ピッチャーのベストボールはなかなか打てるもんじゃないって、腹をくくることもできるようになって」
その結果、最悪のスタートをきった3年秋のリーグ戦も、終わってみれば、リーグ3位の打率3割7分8厘、納得のシーズンとなった。
「ツーストライク・アプローチ」とは?
「今の自分には、バッティングの自信が1つあって、人より選球眼は上じゃないかなと思っていて。『ツーストライク・アプローチ』って、呼んでるんですけど、追い込まれたあと、そこから打ってヒットになるボールを探して仕留めるのか、見極めて四球をもぎ取るのか。それとも三振にきってとられるのか」
ビーディーパーケー。 聞いたことのない言葉を教えてもらった。