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【ドラフト中間予想】野手部門1位正木智也(慶応大)、本人に聞く「早川さん(楽天)から打った二塁打がきっかけだった」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2021/05/26 17:03
筆者が「ドラフト中間予想」で野手部門1位に選んだ正木智也(慶応大)。本人はプロ野球をどのくらい意識しているのだろうか?
「慶應高の頃からずっと見てますけど、彼が野球に対して不誠実な態度を見せた場面を、一度も見ていない。オレが打たずに誰が打つ!そんな場面でちゃんと決勝3ランが打てる彼のバッティング……もちろんそれも素晴らしいけど、それ以上に、彼の野球に対する誠実さ。それが何よりの魅力ですね」
そんな話を聞きながら、決勝3ランの1つ前の打席を思い出した。
1番・廣瀬隆太内野手(2年・181cm83kg・右投右打・慶應高)が同点のホームランを放ったあとの2死ランナーなし。ショート正面のゴロで懸命に腕を振った全力疾走で一塁に向かっていった正木。
その愚直なまでに一生懸命な後ろ姿には、その後の「3ラン」以上に胸を突かれるものがあった。
スポーツ選手たちは、自らのモットーを語る時に、「謙虚」という言葉をよく使う。
謙虚とは、何か。それは少なくとも、自分たちのいたらなさや未熟さばかりを取り上げて、自分たちを実際より小さな存在として認識することでは、決してない。むしろ、自らの「等身大」を客観的な目で正しく測り、認識することこそ、「謙虚」という言葉の本質なのではないか。
慶應大・正木智也とのインタビューは、電話越しにたかだか30~40分ほどの時間だったが、そのほとんどの時間の中で、私はそうしたことを教わったように思う。
後味がこんなに爽やかな「聞き取り」も、ずいぶん長くこの仕事をしているが、今度が初めてではないだろうか。今の日本の学生野球に、彼のような青年がもっと現れてよい。
(【投手1位編】<ドラフト中間予想>投手部門1位森木大智(高知高)、プロ野球スカウトの本音は?「早熟だけで中学150キロは投げられない」 へ)