酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
今年こそ“セはパよりすごく弱い”を覆せるか 交流戦15年間で引き離された勝敗差、要因は原監督も提言したDH制と…
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2021/05/26 11:02
2021年交流戦初戦はウィーラーが古巣相手の決勝弾を放ち、巨人が楽天相手に先勝した
「オープン戦はテストマッチ」ではあるが
「オープン戦なんて、元々勝敗にこだわるものじゃない。テストマッチだから勝敗には意味がないだろう」
こう言う人がいるかもしれない。もちろんシーズンに向けて選手を見極めるという立ち位置ではある。とはいえオープン戦であっても“わざと負ける”ような采配をする指揮官はいない。勝機と見れば代打を出し、ピンチではリリーフを登板させるのだ。勝利を目指してプレーするのはペナントレースと変わりはない。
むしろ、オープン戦はテストマッチとして純粋に“戦力をテストしている”わけだから、実力差がそのまま表れているとも考えられる。こうした成績を見る限り、少なくともここ5年に関してはセ・リーグはパ・リーグより「ちょっと弱い」のではなく、「ものすごく弱い」と見られても致し方ないのかもしれない。
同じ日本国内で「セ・パ両リーグ」と常に並び称され、ライバルとして70年以上も切磋琢磨してきた両リーグだが、いつの間にか大きな実力差がついているのは、由々しきことである。
「DH制の有無」が大きな要因なのでは
両リーグの格差は「DH制の有無」が大きな要因だと感じている。
パはDH制があることでもう1人、レギュラー級の打者を作ることができる。そのことが戦力格差になったと考えているが、この大差はそれだけでは説明できないかもしれない。
そのほかにも感じる部分はある。セ・パの広報に取材依頼をするときのこと。セ・リーグではつい最近まで「問い合わせはファクシミリでお願いします」という球団があった。問い合わせ1つで、と思うかもしれないが、投打の詳細なデータを瞬時に分析する「トラッキングシステム」も、セ・リーグでは最近まで導入していないケースもある。
さらにチーム戦略にデータを取り入れる度合いでも、データ分析スタッフの雇用でも、セ・リーグの方が後れを取り、セには「野球はデータでするものじゃない」という指導者がまだ多いとも言われている。
そうした部分も含めて両リーグの「体制」、さらには「野球観」の差が、こうした大差になった――としてもおかしくない。