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「こんな歓迎を受けるなんて…」井上尚弥ラスベガス興行は成功だったのか? 米在住記者が感極まった“ある瞬間”「動員8474人は少なくない」
posted2025/05/13 11:06

4年ぶりにラスベガスのリングに帰ってきた井上尚弥(32歳)
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Hiroaki Finito Yamaguchi
フロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオ、サウル・“カネロ”・アルバレス、そして井上尚弥――。2000年代前半からラスベガスでボクシングを観てきたが、“シンコ・デ・マヨ”(スペイン語で『5月5日』の意。アメリカではメキシコ系アメリカ人の文化を祝う日として広く知られている)の顔役に日本人ボクサーが据えられることになるなど夢にも思わなかったというのが正直なところだ。
5月4日、T-モバイルアリーナで行われた井上尚弥対ラモン・カルデナス戦を前に、ラスベガスの通称“ストリップ”は井上一色になった。
近年は多くのビッグファイトの開催地となってきたMGMグランドにはモンスターの巨大バナーが掲げられ、ニューヨーク・ニューヨーク、パークホテルといったMGM系列のホテルも井上のビルボードだらけ。ショップの店頭では井上のシャツ、帽子、パーカーといったグッズが売り出され、カジノのブラックジャックテーブル、ルームキー、全室に置かれる情報誌までもがモンスター仕様になった光景は壮観だった。
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「すごい期待値を感じます。だから自分の中でもモチベーションは高いですし、それだけの試合をお届けしたいという気持ちはあります」
さまざまな形で脚光を浴びてきた井上にとっても、ボクサー冥利に尽きる思いだったことがこんな言葉からも伝わってくる。
ゲンナディ・ゴロフキン、ワシル・ロマチェンコのような大物でもこの規模のベガスイベントでフィーチャーされたことはない(カネロ戦でのゴロフキンは完全なBサイドだった)。“砂漠の不夜城”からこれほどの歓待を受けた外国人ボクサーは、筆者の取材歴にある限り、井上以外ではパッキャオやカネロといった現代のドル箱王者たちだけである。