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風間八宏に聞く「高校サッカーのロングスロー問題、どう見てました?」「日本で論争すること自体が論外だね」
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byKYODO
posted2021/05/16 17:03
今年の高校サッカー選手権決勝。青森山田のロングスローのシーン
「松本のロングスローは怖かったですよ。自陣でボールを外に出したら、即ピンチになりますから。だから選手に簡単に外へ出さないようにしようと伝えた。自分たちのパスの質を上げればいいと」
青森山田より格下の高校に自陣でスローインを与えないようなボール保持を求めるのは酷に思えるが、「フロンターレ時代、どうやったらレアル・マドリーに勝てるかを考えてチームをつくっていた」という風間だ。不可能ではないという感覚なのだろう。
ただし、誤解してはいけないのは、「勝利至上主義」を肯定しているわけではないということだ。
「日本が育成大国になるには『勝利至上主義』は弊害だと思います。高校選手権で勝つことだけが指導者の名誉だったら、そのために選手を集めたら話が違う。
それはJユースでも同じ。高円宮杯で勝つことが指導者の評価基準になったら、子供たちのためにならない」
勝利至上主義は言い換えれば、「組織優先主義」だ。組織の手柄のために、個人に我慢を強いる。育成年代でそれをやったら、監督と学校のためにしかならない。
「誰が育てたとか、どこのチームが育てたとか、そんなことはどうでもいいんですよ。ロングスローが得意な選手がいても、他の技術が基準を満たさなければプロにはなれない。ロングスローの練習で他の技術を磨くのが疎かになったら本末転倒だと思います」
今、中学生だったら部活とJユースどちらを選ぶ?
風間がセレッソアカデミーで取り組むのは、言うまでもなく「個人優先」のやり方だ。「世界で1人しかいない選手」を生み出すために、大阪の指導者たちを巻き込んで、地域一体となった育成体制を構築しようとしている。
しかし、日本にそういう環境は限られているだろう。「勝利至上主義」がまだ根強くある中で、もし今風間が中学生だったら、部活とJユース、どちらを選ぶだろう?
期待通り、斜め上を行く答えが返ってきた。