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5年前の「ドラフト10位」12球団最終指名の男…崖っぷちから一軍登板、王者ソフトバンクを0点に抑えるまで 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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posted2021/04/16 11:01

5年前の「ドラフト10位」12球団最終指名の男…崖っぷちから一軍登板、王者ソフトバンクを0点に抑えるまで<Number Web> photograph by KYODO

4月10日のソフトバンク戦で4回から2番手で登板した楽天・西口直人。3回を無失点に抑えた

「同期入団だと1位の藤平(尚真)とか、年下で一軍を経験している人はいるけど、『負けるわけにはいかない』と思いながらやっています。プロ野球選手って、引退する時に『何歳までプレーしたか』『稼げたか』ってところで評価されると思っているんで、これからどんどん成長して、いいピッチャーになっていきたいです。ドラフト1位の選手には負けたくないですね」

 アマチュア時代の経歴に乏しい、ドラフト10位の無名選手――とはいえ、西口はプロ入り当初から首脳陣に評価されるほど、ポテンシャルの高さを持ち合わせていた。

 1年目の17年は春先に一軍の練習に呼ばれ、アピールの場を与えられた。2年目の18年9月30日のオリックス戦ではプロ初登板初先発。初勝利はお預けとなったが8回途中2失点と、上々の仕事を果たした。19年から2年間は故障などもあり一軍登板はなかったが、昨年のファーム日本選手権では先発として6回3失点とゲームを作り、楽天史上初のファーム日本一に貢献。この試合で優秀選手に選ばれた。

 順調でなくとも、着実に歩を前に進めている。その指針が、先のソフトバンク戦での投球に集約されていた。

「どこが手裏剣やねん、ションベンカーブや」

 西口のパフォーマンスを評価する声の多くは、空振りを奪える150キロのストレートを挙げる。と同時に、変化球の精度も西口のレベルアップのバロメーターである。

 そのひとつがカーブだ。実は、プロ入り当初に“手裏剣カーブ”とメディアで取り上げられたことがあった。いわゆる縦に変化するカーブなのだが、「忍者の里」甲賀市にある専門学校出身であるため、そのように命名され、西口自身「全然使ってもらっていいですけど」と笑っていた。

「『どこが手裏剣やねん、ションベンカーブや』とかイジられたりするんですけど、本当の手裏剣みたいな軌道で変化させられるように磨いていきたいですね」

中指と薬指で「スピードが遅くなるでしょ」

 もうひとつ、チェンジアップも挙げられる。

【次ページ】 中指と薬指で「スピードが遅くなるでしょ」

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