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5年前の「ドラフト10位」12球団最終指名の男…崖っぷちから一軍登板、王者ソフトバンクを0点に抑えるまで 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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posted2021/04/16 11:01

5年前の「ドラフト10位」12球団最終指名の男…崖っぷちから一軍登板、王者ソフトバンクを0点に抑えるまで<Number Web> photograph by KYODO

4月10日のソフトバンク戦で4回から2番手で登板した楽天・西口直人。3回を無失点に抑えた

 1年目から習得に励んできた球種で、2年目には現在の形に仕上がっている。「ストレートと同じように腕を振り、空振りを奪えるくらいの変化を実現させるためには?」と模索しているさなか、オリックス・金子千尋(当時)のチェンジアップからヒントを得た。

 大きなポイントは、中指と薬指の2本を、ストレートと同じ縫い目にかけること。

「ストレートは人差し指と中指ですけど、そこよりも与える力が弱くなる中指と薬指でボールを握って投げれば、『必然的にスピードが遅くなるでしょ』って感じです」

 さらに、金子本人からアドバイスをもらう機会にも恵まれたことで制球力も高まり、実戦で使えるボールへと昇華していったという。

 この2球種が、ソフトバンク戦で効力を発揮していたわけである。

 “手裏剣カーブ”で打者のタイミングを外し、150キロのストレートで追い込み、チェンジアップで三振に打ち取る。そんな組み立てで相手打線を翻弄した。

 だからといって、これが西口の「完成形」と断言するには、まだまだ早い。

 カーブの軌道とキレは、手裏剣には程遠いかもしれないし、チェンジアップも改善の余地があるだろう。あるいは、新たな球種を覚えることだってあり得る。ストレートの球速にしても、もっと速くなるはずである。

 なにより西口は、今季はまだ2試合、トータルでも一軍で3試合しか登板していない。今は経験を積む段階だ。投手は抑えて、打たれて、逞しさを育んでいく。

 楽しみは、もっと先にある。

 西口直人の成長譚。ドラフト10位の成り上がり。ロマンの証明は、道の途中。

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