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5年前の「ドラフト10位」12球団最終指名の男…崖っぷちから一軍登板、王者ソフトバンクを0点に抑えるまで
posted2021/04/16 11:01
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
KYODO
今季の登板はまだ2試合、4イニングしか投げていない(4月14日現在)。それでも、楽天・西口直人の名がじわじわと浸透していきそうな、そんな予感が漂う。
きっかけになりうるゲームがある。4月10日のソフトバンク戦だ。
1-7と大量ビハインドの4回から2番手としてマウンドに上がり、3回を2安打4奪三振、無失点に抑えた。最終的に楽天が8-8の引き分けまでもつれ込めたのは、西口の投球が潮目を変え、チームに勢いをもたらしたという見方もできる。
「専門学校」から「ドラフト10位」
プロ5年目。今年で25歳になる西口は、ロマンを抱かせる投手だ。
それは、「成り上がり」の可能性をわかりやすく示してくれるからである。
球歴は華やかとは言い難い。
大阪の山本高ではドラフト候補に挙げられていたが、3年夏は初戦敗退。高校卒業後に進んだのは大学や社会人ではなく、甲賀健康医療専門学校(現在はルネス紅葉スポーツ柔整専門学校)。元阪神の藤本敦士らプロ野球選手を輩出した実績はあるものの、アマチュア球界では無名に等しい。
2016年のドラフト会議。そんなチームから、西口はプロへの道を切り開いた。楽天のドラフト10位。支配下選手では12球団で最も遅い、全体の87番目となる指名だった。
「どれだけ稼げたか」引退する時に評価される
これだけの成り上がり要素が揃っていることは、西口自身、認識している。だからこそ、「這い上がる」と気概を持ち続けている。