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【センバツ】99年夏「0-34」から始まった京都国際…プロ6人輩出、原石を磨く育成力でついに甲子園へ
posted2021/03/23 17:01
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Yu Takagi
京都国際高校のグラウンドは、何回訪れても目を奪われる光景がある。それは多種多彩なボール回しだ。
あえて一度ボールを落としてから投げる練習、動きながらクルッと回ってから投げる練習など多岐にわたるが、選手たちは体とボールを自在に操っている。ソフトボールの狭い塁間で行われることもあるノックでは、「捕ってからすぐ投げる感覚を養わせるため」とそれぞれの練習には明確な目的がある。
視察に訪れるプロ野球スカウトが「攻撃重視に野球がなっている中で、今どきあんなに守備にこだわっているチームは無いよ」と話すほどだ。1日練習ができる日の午前中はほぼ守備練習に費やしている。
その一方で京都国際が「固い野球」としているかと言うと、実はそうでもない。
「勝たせるだけの野球はせえへん」
指揮を執る小牧憲継(のりつぐ)監督はほどよく肩の力が抜けた人物だ。スカウトや記者が小牧と話し出せば、1分もしないうちに笑い声が聞こえてくる。
もちろん、選手たちにとっては厳しい存在ではあるだろう。ただ、「“お前らで目標を決めなさい”と言うてます。監督だけが勝ちたくても仕方ないですから」と、選手たちの心が自然と勝利に向かうことに重きを置く。
「勝たせるだけの野球はせえへん」と話すように、時にはタイムリーが出る確率が低くても、スクイズではなく「チャンスで一本打てるかどうか」の勝負をさせて成長を促すこともある。京都国際の野球で思いきりよいプレーが随所に見えるのは、小牧監督の人間性や狙いにも要因がある。
そんな独自のスタイルを貫く京都国際は、昨年まで甲子園未出場ながらすでにNPBに6選手も輩出。そして今春、いよいよ春夏通じて初の甲子園に出場する。