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【センバツ】99年夏「0-34」から始まった京都国際…プロ6人輩出、原石を磨く育成力でついに甲子園へ
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2021/03/23 17:01
春夏通じて初の甲子園出場となる京都国際高校。今年は山口主将を中心としたチームワークを武器に臨む
「早く飯食うて洗濯もして、一刻も早く寝なあかん」
上野響平(日本ハム内野手)らが入学した5年前ほどからは選手の質や姿勢に手応えを感じて、これまでの方針を大きく転換した。
「目的意識や意欲がしっかりある子が集まるようになりました。ほっといても勝手に練習するし、むしろやり過ぎてしまうから22時半以降の練習は禁止にしました。体作りもしないといけませんから、今は“早く飯食うて洗濯もして、一刻も早く寝なあかん”って方針です(笑)」
そんな小牧の育成力に惹かれ、近畿の甲子園常連校を断ってでも京都国際を選ぶ中学生が増えるようになると、府大会でも上位進出が珍しくなくなった。上野が数々の好守を見せた19年夏の京都大会では準優勝まで勝ち進み、甲子園まであと一歩のところまで迫っていた。
だが、そこからなかなか壁を破れなかった。19年秋は京都府大会準々決勝敗退。20年夏の独自大会は3回戦で敗れた。特に昨年は、早真之介(ソフトバンク外野手)、釣寿生(オリックス捕手)、入海勇太(日本体育大投手)と3人ものプロ注目選手を擁したが、チームとしての結果は伴わなかった。
「ここ3、4年で一番力がない」
しかし昨秋、京都国際は初の甲子園出場となる、センバツ大会への出場を当確させる。「選手個々の力を見ても、ここ3、4年で一番ないと思います」と小牧が評するチームが府大会3位から一気に近畿大会4強へと駆け上がったのだ。現在の最上級生には、例年のような“プロ注目”選手もおらず、さらには故障者も多く出ていた。こだわってきた守備も「全然ダメやった」と小牧が笑うように鉄壁とは言い難いものがあった。それでもチームは勝ち上がった。
そこには、控えの捕手ながらチームで主将を務める山口吟太を中心としたチームワークがあった。自ら主将に志願し「良い選手に頼るチームではダメだと思ったので、練習の姿勢から(自分が)見本になればと思いました」と先頭に立って牽引。この統率力に小牧も目を細める。
「“今年は1+1が10にも100にも1000にもならないと勝てないよ”という話をしてきました。その中で、能力が高い先輩たちの良いところも悪いところも見てきた山口が、レギュラーだけでなく、控え選手にも目を配ってまとめてくれました」