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【天皇杯優勝】「違うんです!」川崎・佐藤HC“4年前の後悔”と長谷川技が明かす「全員の力」の意味
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ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJBA
posted2021/03/23 11:00
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優勝を決め胴上げされる川崎ブレイブサンダースの佐藤賢次HC。決勝の相手となった宇都宮ブレックスは因縁のライバルでもある
後半開始とともに、選手を交替させた指揮官
こうして41-34でハーフタイムを迎えたが、後半が始まるにあたり、佐藤はもう一つギアをあげることにした。
司令塔であるPG(ポイントガード)のスタメン藤井祐眞に代えて、篠山を送り出した。スモールフォワードのポジションでは、あれほど信頼しているスタメンの長谷川の代わりに、パブロ・アギラールを送り出した。
「バスケットボールに関する論文でも証明されているらしいんです。『3Qで流れや勢いを作ったチームが勝つ』と。だから3Qに流れを持ってくることは、とても大切だと考えているんです」
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成果は、大舞台で出た。
後半開始直後に4点まで詰められた点差を、第3Qが始まってから7分あまりで14点まで広げた。そして、最後までリードを守り切り、7年ぶりの天皇杯優勝を飾った。Bリーグ誕生後初めてのタイトルだった。
多くのチームは自分たちの戦い方の基本に立ち返れるようにするため、試合開始時と後半開始時は同じメンバーで臨む。
それなのになぜ、佐藤は選手を交代させたのか。
彼が氷のような冷たさを持った指揮官だからではない。
その逆だ。
チームにいる一人ひとりの選手の力を信じているからこそ、試合開始時のメンバーも、大切にしている後半開始時のメンバーも、大胆に入れ替えられるのだ。
そして、もう1つ。
“あのとき”と同じように、ブレックスが相手だった運命に触れないわけにはいかないだろう。
約4年前の川崎vs.ブレックスで長谷川は
およそ3年10カ月前に行なわれた、Bリーグ初年度のファイナル。そこで川崎はブレックスに敗れたのだが……。
試合の残り1分26秒の場面で、アリウープを狙った篠山のパスがライアン・スパングラーに通った。1点差のビハインドの状況だ。これが決まれば川崎に流れが来そうな場面だった。
しかし、シュートはリングにはじかれてしまった。
実はこのとき、田臥勇太が本来マークする相手から離れてゴール下のカバーに戻っていた。スパングラーの手には届いていなかったし、3Pの成功率のように田臥が迫ってきた影響を数値化することはできない。
ただ、その田臥が、直前までマークについていたのが長谷川だった。
後に、あのシーンについて「パスの出し手と受け手だけではなく、田臥にゴール前に飛び込ませないようなポジションを長谷川選手がとることをふくめ、全員がレベルアップする必要があるのでは?」と問われた佐藤は、即答している。
「違うんです! 長谷川は一言でも伝えられれば、それを頭に入れて動けるタイプなんです! むしろ、長谷川に何か言えることが自分にあったのではないかと……」