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【天皇杯優勝】「違うんです!」川崎・佐藤HC“4年前の後悔”と長谷川技が明かす「全員の力」の意味
posted2021/03/23 11:00
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
JBA
こうなるのは、運命だったんだ。
後になって、そう確信することがある。
さいたまスーパーアリーナで行なわれる天皇杯の少し前に、川崎ブレイブサンダースは宿泊するホテルを変更した。当初予約しようとしていたホテルには、クラブの感染対策基準を満たす食事スペースがないことが判明したからだ。彼らは急遽、広い食事会場を用意してくれるホテルに宿泊することになった。
もちろん、そのホテルの宴会場が昨年の王者サンロッカーズ渋谷の優勝祝賀会が行なわれた、とてつもなく「縁起の良い」場所だったことなど、知るよしもなかった。
休む時間が少ない連戦のトーナメントを戦うため
決勝当日の午前11時15分。安全な会場で食事をした選手たちが、ホテルでのミーティングに臨んだ。ミーティングの開始時刻は、準優勝に終わった前の年の決勝戦の反省を踏まえて変えられていた。
Bリーグ開幕後、天皇杯の決勝に挑むのは今回で3回目だ。昨年に続いて決勝前日の準決勝はスケジュール面でハンデのある2試合目が割り当てられていた。
昨年のスケジュールはこうだ。
朝食→9時からミーティング→昼食→試合会場へ移動→14時に試合開始
今年はこう変えた。
朝食兼昼食→11時15分からミーティング→そのまま試合会場へ移動→14時に試合開始
これにより選手たちは前年よりも2時間ほど長く身体を休ませられた。思い切ってブランチのようなスタイルにできたのは、今シーズンから取り組んできたコンディション調整の成果だ。
ヘッドコーチ(HC)の佐藤賢次は言う。
「連戦のトーナメントで一番きついのは、選手が休む時間が限られていることです。あの2時間は、回復のためにはすごく大きい」
ミーティングでは決勝の相手である宇都宮ブレックスの特徴がビビッドに伝わるような映像を用意した。
ただ、もう1つ、佐藤には伝えたいことがあった。
宿敵ブレックスとの決戦の前に見せたかったもの
佐藤HCと、勝久ジェフリーと穂坂健祐という2人のアシスタントコーチ(AC)によるトロイカ体制になってから1年半かけて築いてきたものはいくつもあるが、その最たるものが「準備」する意識だった。
元々は穂坂ACの口から出てきた「Be Ready」というキーワード。これはコートの上の4段階のプレー原則の最初に来るもので、昨シーズンのスローガンでもある。
なぜ、あの言葉をスローガンにしたのか。
一昨シーズンの最終戦、佐藤がHCに就任する前の最後の試合で浮き彫りになった課題があったからだ。実際、HC就任後の初練習が行なわれた2019年7月15日に、その試合の映像を見せてこう伝えている。
「相手に先に準備されて、攻撃のエントリーをつぶされて、パスを出すところがなかった。オフェンスが機能していないよ!」
ほとんどの場面で川崎よりも先に準備していた相手チームというのが、今回の決勝で相まみえるブレックスだった。
宿敵との試合の前に、見せておきたかったのだ。前日の準決勝で選手たちが披露していた進化の跡を。