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【天皇杯優勝】「違うんです!」川崎・佐藤HC“4年前の後悔”と長谷川技が明かす「全員の力」の意味
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJBA
posted2021/03/23 11:00
優勝を決め胴上げされる川崎ブレイブサンダースの佐藤賢次HC。決勝の相手となった宇都宮ブレックスは因縁のライバルでもある
優勝記念のTシャツとキャップをファンにも届ける
優勝が決まった直後から、川崎の選手たちは優勝記念のTシャツとキャップを身につけて、コート上を跳ね回っていた。
これまでの天皇杯でも、優勝チームは一様にTシャツを用意していた。ただ、そこに加えて優勝記念キャップまで用意した手際の良さが川崎らしかった。
そして、優勝した直後から、両方のグッズのオンライン販売を開始した。
競技面とビジネス面の両輪がかみ合った行動のように感じられるのだが、社長の元沢伸夫は、原動力はあくまでもファンへの『想い』だと語る。
「ビジネスの側面はゼロではないですが、それよりもやはり、ファンのみなさんが最も盛り上がっているときに、寄り添っていたくて。あの最高の瞬間を見ていたら、選手たちが身につけるものを欲しくなるじゃないですか! 会場に来られない方もたくさんいる状況ですから、選手と一緒に喜びを味わったり、思い出を共有していただくために、このタイミングで買っていただけるように準備しました」
コートの外にもまた、チームの優勝を信じて、『準備』をしている人間がいた。
優勝する運命をたぐり寄せられたのは、クラブにかかわるそれぞれの者が、与えられたポジションで、やるべきことを全うしたからだった。
「パパ、この帽子、カッコいいね」
優勝の翌日――。
静かな日曜日の朝。長谷川は声をかけられた。ソファーの上に座るときでも、ソファーの背もたれは使わず、長谷川の大きな身体に身を預けることの多い愛息からだ。
「パパ、メダル持ってるじゃん! この帽子、カッコいいねー!」
王者に与えられる優勝メダルと、ファンと一緒になって楽しめるようにとクラブが用意してくれたキャップ。
川崎というクラブは、ファンを含めたサポートしてくれる人たちみんなを「ファミリー」と呼び、戦い続けてきた。ファミリーのなかの一番近くに位置する愛息の一言で、長谷川は気づかされた。
「朝起きてから、そう言われて……。そこで『あぁ、優勝したんだなぁ』と実感しました」