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開幕戦を諸見里しのぶが“解説” 逆転V小祝さくらの「有言実行」と渋野日向子の男子プロからの“学び”とは
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byAtsushi Tomura/Getty Images
posted2021/03/10 06:00
国内女子ツアー開幕戦「ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント」で逆転優勝を飾った小祝さくら(22)。今年は「賞金女王」を目指す
攻めた19歳西郷真央「堂々としている」
初日から首位をキープしていた19歳の西郷真央プロも楽しみな存在ですね。彼女のことは昨季の「アース・モンダミンカップ」から見ていますが、力強さを感じさせるゴルファー。シーズン途中に背中を痛めたとも聞きましたし、そのあたりを意識して練習やトレーニングを変えて臨んだ開幕戦だったはずですから、良いゴルフが出来たことは今後に期待が持てるのではないでしょうか。
最終日の18番パー5では、確実に刻んだ同組の小祝プロ、森田遥プロに対して2オン狙いの勝負に。ボギーとなりましたが、優勝のためにチャレンジした結果なので仕方ない。一番悔しい思いをしていると思うので、飛躍につなげる材料にしてほしいですね。10代とは思えない堂々としたプレーぶりでした。
思えば、私も20歳でツアー初優勝(SANKYOレディースオープン)を経験しましたが、当時と今ではレベルが遥かに違います。西郷プロをはじめとする若手選手たちは身体の強さがあり、クラブの扱い方がうまく、みんな技術が高い。そして何より精神的に落ち着いていますよね。私はもともと緊張しいなので「集中!集中!」と力むこともありましたが、勝負どころでの緊張感すらも楽しみながらやっていて、どんどん攻めている。「優勝できたらいいな」ではなく「優勝するぞ」という強い気持ちを感じるんです。
みんなが課題と向き合って臨んだ開幕戦
それはやはり渋野プロが全英オープンを優勝(2019年)したことが大きいと思います。渋野プロは、昨季は苦しんだシーズンだったと思いますが、12月の全米オープンでは最終日を首位で迎えて優勝争いを引っ張り、4位に入りました。大舞台で活躍する姿を間近で見た日本人選手たちも多かったですから、一層「自分たちもメジャーで勝つんだ」と志は高くなったのではないでしょうか。
何をすれば上手くなれるか、強くなれるか、世界に近づけるか。それぞれが課題を持ち帰ってしっかりとオフを過ごしてきたからこそ、素晴らしい開幕戦になった。私の時代で宮里藍さんがいたように、刺激を与える存在はとても大きい。
さらに、黄金世代やプラチナ世代といった若手選手たちの視線が上がることで、上田プロや藤田さいきプロ、有村智恵プロといった経験豊富な選手たちも負けじと優勝争いに絡んでくる。だからこそ、今のツアーが盛り上がっていると思うんです。
男子プロから学ぶメリットとは?
その渋野プロも今は新しいスイングづくりに取り組んで、さらに自分を高めるチャレンジを始めたところ。コーチと離れ、石川遼プロといった男子プロの助言も受けたと聞きました。
私も片山晋呉プロの合宿に参加するなど、男子プロからヒントをもらうことは多かったです。特に片山プロからはゴルフに向き合う心得や、楽しんでプレーするための秘訣など、メンタル面を勉強させてもらいました。あれだけすごい選手なのに人一倍、練習もトレーニングもする。ここまでしないとダメなんだと痛感しましたし、本人からすればそれが当たり前だから、楽しんでやる。技術的なところでもアプローチ、バンカーショットの種類など、得るものは多いと思います。
あとは自分よりも強い(飛距離が出る)相手と接することで、良いイメージを植え付けることが期待できます。私も調子が悪い時はよくタイガー・ウッズのスイング動画を見て、“振る”イメージを頭の中で作っていました。男子プロと接することでまた違った視点でゴルフと向き合うことができるので、渋野プロもいい刺激を受けているはず。新しいスタイルにも注目したいですね。