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【川崎に新加入】「自分は“フロンターレっぽい選手”ではない」法政大ボランチ松井蓮之にスカウトが受けた衝撃とは
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byNaoki Nishimura/AFLO
posted2021/02/25 18:00
川崎フロンターレへの2022年シーズン加入を発表した法政大MF松井蓮之。フィジカルと豊富な運動量が武器のボランチだ
キャンプで体験した王者のサッカー
キャンプでは、映像で観ていた世界とは違う発見とプロの厳しさを痛感する時間が交差した。中村憲剛が現役を引退、守田がポルトガルに移籍したとはいえ、成長著しいプロ5年目のMF田中碧、さらには新加入MFジョアン・シミッチなど、ボランチ枠は相変わらず激しい争いが続いている。
「僕もそうでしたが、攻撃の華麗さに目が行きがちだと思うのですが、とにかく守備が凄かった。左利きで技術が高い印象があったシミッチ選手もボールを奪い切る力がすごかったですし、碧くんには守備の球際の強度と攻撃から守備への切り替えの速さに衝撃を受けました。
フロンターレのサッカーは頭をフル回転させてプレーしないといけないので、頭が本当に疲れました。(キャンプでは)毎日がもう刺激的で、『まだまだこのレベルに達していないな』と痛感する一方で、日に日に『ここなら間違いなく自分の理想とする選手になれる』と確信をしています」
王者のサッカーだ。圧倒されるのは当然。それでも、この2週間で自分の決断の正しさを確信することができた。それは自信となり、また前へ歩みを進める理由にもなる。
持久力測定も三笘に次いで2位
刺激を受けただけに終わらず、それをきちんと自分に落とし込む。その真摯な姿勢こそ、向島スカウトが期待した部分だった。
「蓮之は言われたことをすぐに理解するんです。修正能力が高いので、できないことが次の場面ではできていて、かつそのサイクルが非常に早い。練習後に1つのトラップについて話すと、『あのトラップは大きかったですね。次はあそこに止めるようにします』とこっちの話の意図をすぐに理解して、翌日に見たらそれを実行している。自分のミスがすぐ分かるし、分析できて、会話もできる。
(キャンプ中の)練習試合ではアンカーだけでなく、シャドーや右サイドバックもこなしたのですが、その時も時間が経つにつれて順応し、トライ&エラーを繰り返していた。ヨーヨーテスト(持久力測定)でも三笘薫に次いでチーム2位と、運動量も多い。非常に希少価値の高い選手だと思っていますし、彼の努力次第では『最もフロンターレらしい選手』になれる可能性を持っていると思います」
キャンプを通じて松井が学んだのは、川崎のボランチに「守備的」「攻撃的」という概念がないことだ。中盤の3枚は常に流動性を求められ、フィニッシュワークへの関わりも求められる。攻守において高いアベレージを出し、その中で自分のストロングポイントを見せなければならない。
「正直、僕は今もフロンターレに合う選手ではないと思うんです。でも、これまで自分のイメージにある“守備的ボランチ”という言葉を取り払って、守備は安心できて、かつ攻撃の質も高いという選手になれるようにコツコツ積み上げていこうと思っています」