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【川崎に新加入】「自分は“フロンターレっぽい選手”ではない」法政大ボランチ松井蓮之にスカウトが受けた衝撃とは
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byNaoki Nishimura/AFLO
posted2021/02/25 18:00
川崎フロンターレへの2022年シーズン加入を発表した法政大MF松井蓮之。フィジカルと豊富な運動量が武器のボランチだ
姉・愛莉へ芽生えた「ライバル心」
覚悟を決めて新たなスタートを切った松井だが、彼のパーソナリティを形成する上で、大きな影響を与えた人物がいる。それは3つ年上の姉・愛莉の存在だ。
雑誌『ニコラ』の専属モデルとして芸能界デビューを果たすと、13年には16歳ながら『ゼクシィ』の第6代目CMガールとしてブレイク。その年の年末には第92回全国高校サッカー選手権大会の応援マネージャーに就任するなど、時の人に。その反面、若くして活躍する姉と比較されてきたことで「お姉ちゃんの話はずっと避けてきました」としながらも、「正式にプロサッカー選手になることで向き合わなければいけないことですし、この場を借りて、自分自身思っていることを伝えたいと思いました」とその思いを素直に口にし始めた。
「厳しい芸能界の世界で仕事を続けることは、本当に1人のプロフェッショナルとして凄いなと思っています。サッカーと芸能は異なる世界ですが、僕もプロサッカー選手になることを意識するようになってからは、『絶対に負けられない』というライバル心が芽生えました。
ドラマや撮影に臨む時のメンタリティー、ミスをしてしまった時のメンタルコントロールなど、僕の想像を絶するような苦労や葛藤をしながら活躍している。お姉ちゃんとはめちゃくちゃ仲がいいのですが、そういう苦労や悩んでいる様子は一切見たことがない。そこに『強さ』を感じています。フロンターレ入りを報告した時も『凄いじゃん!おめでとう!』と自分のことのように喜んでくれたし……。心から尊敬する人です」
「背中を追いかけ続けていきたい」
ただ、まだ同じステージに立ったという感覚は一切ない。
「お姉ちゃんとは踏んでいる場数が違う。僕がフロンターレで活躍したり、日本代表に入った時に初めて同じステージに立てたと言えると思うんです。それまではライバルだと思って、背中を追いかけ続けていきたい。恥ずかしくて本人には言えないのですが、これからは同じプロとしてたくさんの話がしたいし、一層負けたくないと思っています」
松井蓮之のサッカー人生はまだまだ序章に過ぎない。これからどんなストーリーを描いていくのか。一番身近にいるプロフェッショナルの背中を見つめながら、彼はこれからも謙虚にかつ貪欲に成長を求め、フロンターレにとって理想のボランチとなるための道を、一歩一歩着実に踏み締める。