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【ドリームチーム選出】FF誌編集局長が語る舞台裏「ロナウドがクライフに勝ったのはひとつのサスペンスだった」
posted2021/02/24 17:01
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
JMPA
パスカル・フェレ『フランス・フットボール誌』(以下FF誌)編集局長のバロンドール・インタビューの後編である。
新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックが深刻な危機をもたらした昨年、FF誌は1956年の創設以来はじめてバロンドールの選出を中止した。そしてバロンドールに代わって選出したのが、バロンドール・ドリームチームであった。1956年以降の史上最強イレブンを選ぶ。他のメディアの企画であったなら、客寄せのためのアトラクション的な意味合いをぬぐえなかっただろう。だが、バロンドール投票委員たちによるベストイレブンの選考は、単なる企画以上の重みを持った。選ばれた11人のうち、ペレ、リオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウドを除く存命の6人がインタビューに応じたのも、FF誌による選出であることの価値を物語っている。
そうした事情について、さらにはバロンドールの今とこれからについてフェレが語った。(全2回の2回目/#1から続く・肩書などは掲載当時のままです)
(田村修一)
バロンドールを選出しなかった理由
――昨年は1956年の創設以来はじめて選出を中止しました。7月末の決定でしたが少し早すぎたのではないですか?
フェレ 適切な時期の判断だったと思っている。バロンドールの価値と期待を踏まえて、大前提として公平さを保ったうえでの選考でなければならない。全員が同じチャンスを得られることが前提だ。ところが2020年は違った。選考の際に最も大きなウェイトを占めるふたつの大会のうちEUROが延期され、CLも決勝ラウンドを開催できるかどうかわからなかった。
結局、CLは開催されたが、大会に臨むチームの状況が異なっていた。バイエルンのように2カ月をかけて準備ができたチームもあれば、イタリアやスペインのチームのようにまったく準備期間のないままに臨まねばならないものもあった。またパリ・サンジェルマンのように、公式戦を2試合だけ開催して臨んだチームもあった。
ロベルト・レバンドフスキがリオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドより多くのゴールをあげることができたのも、試合数がふたりより多かったからだ。繰り返すがバロンドールは公平さのうえに選ばれねばならないのに、それぞれの条件が同じではなかった。条件が平等ではないから比較ができない。だからたしかに少し早かったのは認めるが、選ばないという決断をするに至った。