松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER

射撃はミリ単位の「静」なる攻防戦 「静止状態で自身と向き合う」水田光夏に修造、大いに共感する 

text by

松岡修造

松岡修造Shuzo Matsuoka

PROFILE

photograph byYuki Suenaga

posted2021/03/07 06:03

射撃はミリ単位の「静」なる攻防戦 「静止状態で自身と向き合う」水田光夏に修造、大いに共感する<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

初めてのエアライフル体験で10点満点を出した松岡さん。水田光夏選手にもほめられた

鳥居:銃を構えて静止しているだけに見えても、技術的にやらなければならないことは山ほどあります。それらは全て繰り返し練習して、段階的に身につけていくもの。ただし、単に繰り返すだけでは意味がなくて、頭のてっぺんから足の爪先まで、自分の体の中で何が起きているかに意識を向け、宇宙の果てから地球の中心まで自分が重力とどう関わっているかを考えることが必要です。

自分自身と向き合う射撃の面白さ

松岡:光夏さんが思うパラ射撃の一番の魅力ってどこなんでしょう?

水田:やっぱり「止まっている」というのがポイントだと思います。銃を構えているときは揺れないで止まっていることが大事なんですが、静止状態を作るには体の力を抜きながらも安定した姿勢を取らなければなりません。ところが銃を構える姿勢はもともと不自然な状態ですから、どうしてもどこかに力が入ってしまうんですね。それを「今、この辺に力が入っているな」って自分の体に意識を向けて力を加減していく、その自分自身と向き合う時間が面白いなと思います。

松岡:今のお話と自分の射撃体験を踏まえて思うのは、射撃というのは自分を見つめる「静」の時間で、瞑想の感覚によく似ているなってことです。僕、現役選手時代、よく瞑想をしていたんです。できるだけ無になって力を抜くために。

水田:そうかもしれません。できるだけ力を抜いた状態で安定した姿勢を作るという。

松岡:光夏さんが自分と向き合っている射撃の時間は、ものすごく有意義な時間という気がします。精神統一という意味でも、精神面の成長という意味でも。

水田:うーん……。

松岡:え、そうでもない?

水田:いや、どうだろう?

松岡:いいんです、そうやって言葉にできないぐらいが。それだけ自然な感覚でやっているということですから。光夏さんは社会人1年生でもありますね。就職したことで競技生活に変化はありましたか?

【次ページ】 同世代に興味を持ってほしい

BACK 1 2 3 NEXT
松岡修造
水田光夏
東京パラリンピック
オリンピック・パラリンピック

他競技の前後の記事

ページトップ