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サッカー選手“引退後”の現実とは イングランドでは40%が4年以内に破産、3分の1が1年以内に離婚
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/02/15 11:01
華々しいプロの世界とは裏腹に、引退後のセカンドキャリアに苦しむアスリートは少なくない。今回はドイツの育成事情を参照しつつ、第2の人生を充実させるための枠組みについて考えていこう
「クラブは選手が研修を受ける機会をしっかりと作ってほしい。ドイツリーグ連盟(DFL)との協力で行われているプログラムもあるけど、そうやって引退後のキャリアに向けて、どのように準備して、何にフォーカスして、どんなことに取り組めばいいか、また税金対策や資金繰りに関しての正しいアドバイスを受けられる場はすごく大切だと思うんだ」
また、セカンドキャリアへのイメージを持ち、そのための準備の必要性を正しく知るうえで、育成年代からその大切さをしっかりと学んでおくことにも意味があるだろう。
充実するドイツの育成環境
その点、ブンデスリーガの育成アカデミーは学業を大事にしている。
選手にはドイツのギムナジウム(日本でいう中・高一貫進学校)の卒業時にドイツの大学入学資格となるアビトゥーアか、職業研修資格を取得することを強く勧めている。
学校の試験と試合が重なった場合は、試験が優先される。この判断はプロとなった後のセカンドキャリアに意味があるというだけではなく、プロになれず次の道を探すうえでもとても重要なことだろう。
現在デュッセルドルフでプレーするアペルカンプ真大は、昨年そのアビトゥーアに無事合格し、その意味について次のように答えてくれた。
「サッカーの世界では何が起こるかわからないし、いつ大きな怪我をするかわからない。ドイツ語では“2つ目の足”と言うんですけど、サッカーで何か起きたときのために別の何かを持っているのはすごく大事ですし、僕の親も学校が大事と言ってくれていました。
大人になるということは、責任を持って生きるということだと思っています。自分でやらないといけないし、コンディション調整なども含めて、すべての責任を自分がしっかりと背負わないといけないということだと思っています」