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サッカー選手“引退後”の現実とは イングランドでは40%が4年以内に破産、3分の1が1年以内に離婚
posted2021/02/15 11:01
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
華々しい舞台で眩いばかりの光を放つプロスポーツ選手たち。誰もが憧れる世界だろう。しかし、そこは転落と隣り合わせの世界でもある。
現実社会とつながりがあることから目を背けてしまうと、転がり落ちたときになかなか歯止めをかけることができない。そんな怖さをはらんでいる。
プロスポーツ選手として活躍できる時期は決して長くはない。そして、引退後も人生は続いていく。いや、引退後の時間の方が基本的には長い。圧倒的に長い。
終わってからのことは終わってから考えたらいい、と考える人はいるだろうし、それでうまくいく人もいるだろう。でも、うまくいかない例は僕らが思っている以上に多い。
アスリートが陥る引退後の苦悩
現役時代にどれだけ優れた選手であっても、引退後に目標を見失ってしまったり、鬱に悩まされたり、“仲間”と思っていた人に誘われて始めた仕事で失敗したりという例は、それこそ後を絶たない。
プロ選手のセカンドキャリアをサポートする『Player 4 Player』という組織を設立した元イングランド代表のエミール・ヘスキーは、キャリア引退後の様子について次のように話している。
「僕もそうだが、サッカーでは何をどうしなければならないかをずっと言われてきていた。そして、引退して初めて、自分で考えるということを始めなければならなくなる。それに、世間一般では当たり前と思えることを、まったく知らない選手も少なくないんだ。例えば朝食の準備だよ。別に何も難しくないと思われるだろうけど、それさえも難しいと感じる元選手はいるんだ。だって、引退するまで一度もやったことがなかったりするんだから」
食事もそうだし、掃除も洗濯もやり方がわからないという。
特に最近では、欧州トップレベルでプレーする選手は移動の連続。家でプライベートな時間を過ごすよりも、ホテル暮らしの時間が長く、必要なものはすべて準備されている。
僕らにとって日常的で当たり前だと思われることも、彼らにとっては当たり前ではない。仕事に必要なスキルがないどころか、エクセルやワードの使い方がわからない、メールが書けない、税金の仕組みがわからない、という場合もある。
資金はあるけど知識がない。あるのはイメージだけ。引退後すぐに商売を始めようとし、寄ってくる“仲間”の甘い言葉に誘われて言われるがままお金を出してしまう……。