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新しい地図・草なぎ剛×パラテコンドー 太田渉子が目指す渾身の回し蹴り【パラスキー銀メダリストの転身】
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/02/22 11:00
番組でテコンドーを体験したことがあるという草なぎ。撮影では太田も感心する見事なフォームを披露した
草なぎ 強敵に火をつけちゃいましたね。またいつか戦うんでしょ?
太田 たぶんパラリンピックでも当たると思いますし、そこで勝たないとメダルは獲れないですから、頑張りたいです。
草なぎ その勝負、見どころですね。エイミー選手の強みは何ですか。
太田 とにかく“上手い”です。テコンドー歴が長いので技の種類も豊富ですし、58kg超級の中でもスピードがあります。
草なぎ 技の種類というのは?
太田 基本的な蹴りは3種類あります。回し蹴りは2点、後ろ回し蹴りは3点、一回転して蹴る「ターン」は4点と、難易度が高いほど高得点が得られる仕組みです。でも、女子の試合ではなかなか「ターン」をする選手はいないですね。一回転するとどうしても相手に背中を見せてしまいますし、その間に蹴りを当てられちゃうとバランスを崩しやすいんです。
草なぎ でも、決めたらかっこいい。太田さんは「ターン」出すんですか。
太田 まだ練習中です! 試合終了間際でも一発逆転のチャンスが生まれるので、本番までに使えるようにしておきたいですね。
先手を読むテコンドー、芝居にも通じる?
草なぎ オリンピックのテコンドーとは違い、パラテコンドーは頭部への攻撃は禁止されていますよね。そうすると、攻撃するところが限定されるような気がします。
太田 そうなんです。胴を隠されてしまったら点が取れないので、いかに相手の防御を緩めるかがポイントです。相手が蹴った後の、一番バランスを崩しやすくなっているタイミングを狙ったりとか。
草なぎ 相手の動きを先手先手で読んで対応していく感じなんですね。
太田 フェイントも有効な手段ですね。こちらの攻撃に対して相手が蹴りで合わせてきた場合に、相手だけが蹴っている状況を作り出すことができるんです。また、攻撃されたときに前に来るタイプなのか下がるタイプなのかが分かるので、動きを予測することにもつなげられます。
草なぎ めちゃくちゃ頭を使いますね。
太田 なので、たいてい1ラウンド目は相手がどういう風に出てくるかっていうのを見る時間にしています。
草なぎ 相手との距離感やタイミング、いわゆる“間合い”ですね。そこは映画やドラマのお芝居にも通じるかもしれません。僕は太田選手のように戦っているわけじゃないけど、他の演者とキャッチボールをしないと自分だけが前に出てしまったりすることもある。共演相手も変化する中で、その変化を受け入れつつ、自分の良さを出さないといけない。だから僕の仕事もテコンドーと一緒……と言うとちょっと無理があるか(笑)。でも、格闘技や武道には生活につながる一面がありますよね。