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新しい地図・草なぎ剛×パラテコンドー 太田渉子が目指す渾身の回し蹴り【パラスキー銀メダリストの転身】 

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2021/02/22 11:00

新しい地図・草なぎ剛×パラテコンドー 太田渉子が目指す渾身の回し蹴り【パラスキー銀メダリストの転身】<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

番組でテコンドーを体験したことがあるという草なぎ。撮影では太田も感心する見事なフォームを披露した

太田 引退後は後輩育成や普及活動に取り組んでいたのですが、テコンドーが東京パラで初めて採用されることを知りました。それで興味を持って、テコンドーの合宿を見学させてもらったら、足技をかける選手が踊っているように見えてすごく綺麗だな、と。でも当時、パラの世界に日本人選手はひとりもいなくて……。

草なぎ えっ! そうだったんですか。

太田 はい。だから自分も体験して広めたいと思ったんです。でも、最初は足も全然上がりませんでしたし、人を“蹴る”ということにも抵抗があったので、選手として本格的に取り組もうとは思っていませんでした。ただ、趣味として始めたときに協会の方からは「他に選手が出てこなかったらあなたがなってね」と言われていて。

草なぎ まただ、君は素質があるよって(笑)。テコンドーを始めてから、何かアスリートとして変わったことはありますか?

太田 意外と注目されるのが好きなんだと気づきましたね。クロスカントリースキーはスタートとゴールには人が大勢いるんですけど、主に滑る林の中のコースはほとんど人がいないので、結構孤独なんです。自分の呼吸とスキーの滑る音しか聞こえない。でもテコンドーはコートの四方をお客さんに囲まれていて、応援もヤジもずっと飛んできます。はじめて試合をしたときに、スポットライトを浴びてるのがすごく気持ちよくて。ボロ負けで身体も痛かったんですけど、それよりも気持ちよさのほうが強かったのを覚えてます。

草なぎ 最初は趣味のような感じだったとのことでしたが、何かハマっていくきっかけがあったんですか。

太田 18年の1月に初めて国内でパラテコンドーの大会が開催されたんですけど、そこに選手として出てみないかと誘われたのがきっかけでした。大会まで1カ月くらいしかなかったのですが、どうせ出るんだったらある程度は練習して出たいなと思って、それまで月1回とかだった練習を週1回に増やして臨みました。

草なぎ 結果はどうだったんですか。

太田 優勝しました。

草なぎ すごい!

太田 と言っても女子は2人しかいなかったので、1回勝ったら優勝でしたけど(笑)。

スキーで培った持久力とメンタルコントロール

草なぎ やっぱり運動神経がいいんでしょうね。スキーで培った能力や経験が生きていると感じることはありますか。

太田 持久力があるのは強みだと思います。テコンドーは2分のラウンドを3回繰り返すんですが、みんなが失速する最終の3ラウンド目でもあまり動きが落ちないので。あとはスキーで場数を踏んでいる分、気持ちのコントロールやメンタル面にも経験が生きているかもしれません。緊張はするけど、大きな試合になればなるほど力を発揮できるタイプというか。

草なぎ いいですね、それ。緊張をバネにできるんだ。19年の世界選手権では早くも銅メダルを獲得されていて驚きますけど、そこでもメンタルの強さが生きてそう。

太田 テコンドーの大会は世界ランキングに基づくトーナメント戦で、ランクが一番上の選手と一番下の選手が当たる形式です。私は現在8位ですが、以前はもっと下位だったので、いつも1回戦で世界ランク1位のエイミー・トゥルーズデール選手と当たって負けていたんです。その彼女に初めて勝った。自信になった大会です。

草なぎ 世界1位に勝っちゃったんだ。

太田 エイミー選手、ちょっと油断していたらしいです。でも、私に負けたのがよほど悔しかったのか、次に会ったときにはすごくシェイプアップしていて、もっと強くなっていました(笑)。

【次ページ】 先手を読むテコンドー、芝居にも通じる?

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