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高3で新人王に→センター試験まで2カ月半で勉強開始→大阪大合格… 父が知る糸谷哲郎八段の“受験勉強術”とは
posted2021/02/06 06:02
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Yasuhiro Itodani
糸谷哲郎八段が棋王戦(渡辺明棋王)に初挑戦する。圧倒的な早指しで竜王を獲得するなど将棋ファンに強烈なインパクトを残すとともに、将棋界で初となる“プロ入り後、国立大に進学した棋士”となり、大学院にも在籍した異色の棋士だが、その父・康宏氏に愛息のこれまでの歩みや教育法を、中・高校時代の同級生だった筆者に語らい合ってもらった(全3回の3回/第1回、第2回はこちら)
糸谷八段は中国地方有数の進学校で学びながら、奨励会で将棋の修行を続け、高校2年で四段に昇段。高校3年でプロ棋士になった。それ以降の活躍ぶりについて聞いてみた(広島学院のことを「学院」、康宏氏のことを「糸谷」と記す)。
「将棋界は斜陽産業」発言で伝えたかったはずのこと
――高校3年の10月、若手棋士の登竜門である新人王戦で優勝。その表彰式で、「将棋界は斜陽産業。僕たちの代で立て直さなければ」と言ったのが物議を醸した。
「あのコメントの前の部分ばかりがクローズアップされたように思う。本人が言いたかったのはむしろ後半の部分だったんじゃないのかな」
――大会を主催した、しんぶん赤旗(日本共産党の機関紙)のインタビューで、「中学生の頃に『資本論』と『「共産党宣言』を読んだ」と答えるあたり、当時からサービス精神旺盛だったんだね(笑)。それから大学へ進学するわけだけど、羽生善治永世七冠は大学へは行っていないし、藤井聡太二冠にしても中学時代に“高校に行くかどうか”が話題になったが、当面、大学進学は考えていないようだ。大学へ進学することについて、息子さんと特に話し合ったの?
「棋士になっても大学へ行くことは、早くから決めていたようだ。『棋士という職業が決まったことだし、大学で好きなことを勉強したい。哲学をやりたい』と言う。僕も妻も、異論はなかった」