酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
菅野智之“NPB初の年俸10億円”だとしても…イチロー“初5億円超え”以降広がる「経済格差問題」とは
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2021/01/13 11:01
2021年の年俸が推定5億7000万円と報じられる柳田悠岐(左)と、巨人残留の菅野智之。果たして菅野は“10億円プレイヤー”となるのか
2019年のレートでは、ストラスバーグの年俸は約42億1000万円、巨人菅野とは7倍近い差が開いている。
全体を見ても2020年のMLB選手の平均年俸は4.7億円、NPBは4000万円弱。平均でも10倍以上の格差だ。
経済格差があるからMLB移籍が止まらないのでは
結局、この経済格差があるから、NPBトップクラスの選手のMLBへの移籍が止まらないのだ。日本でトップに上り詰めた選手は、成績を挙げても年俸はほとんど上がらない。MLBに移籍すれば、5億円~6億円は並みの選手の年俸だ。ローテーション入りすれば10億円は固い。活躍すればダルビッシュ有のように2200万ドルもの年俸も夢ではない。
今世紀に入って、MLBはインターネットも駆使して放映権やフランチャイズ、ライセンスなどのビジネスを拡充させて、どんどん経済規模を広げてきた。NPBもソフトバンクなどがボールパーク化を進め、地域密着型のビジネスを成功させたが、スケール感が全く違う。
ある意味で経済的に低迷する日本と、発展を続けるアメリカの「格差」が端的に表れているということになる。
“世界一客が入る”NPBは価値を最大化できるか
2019年の段階でNPBの公式戦の平均観客動員は、3万928人、MLBは2万8660人。NPBは世界一お客が入るプロ野球リーグになっていたが、MLBとの年俸格差は10倍以上に広がっているのだ。
新型コロナ禍で、MLBも甚大な経済的損失となった。立て直しは容易ではないが、旺盛な事業意欲がある組織だけに、新たなビジネスモデルをどんどん創出するだろう。
NPBも守りの姿勢ではなく、機構、球団、選手の「価値の最大化」のために、そして人材流出を食い止めるために――コロナ禍が明ければ新たなビジネスに真剣に取り組むべきだろう。
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