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菅野智之“NPB初の年俸10億円”だとしても…イチロー“初5億円超え”以降広がる「経済格差問題」とは
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2021/01/13 11:01
2021年の年俸が推定5億7000万円と報じられる柳田悠岐(左)と、巨人残留の菅野智之。果たして菅野は“10億円プレイヤー”となるのか
2016年 金子千尋 6億円(オリックス)33歳
24試7勝9敗0SV 162回 率3.83(10)
2016年 黒田博樹 6億円(広島)41歳
24試10勝8敗0SV 151.2回 率3.09(7)
2017年 金子千尋 6億円(オリックス)34歳
27試12勝8敗0SV 184.1回 率3.47(9)
2018年 金子千尋 6億円(オリックス)35歳
17試4勝7敗0SV 100回 率3.87
2019年 菅野智之 6億5000万円(巨人)30歳
22試11勝6敗0SV 136.1回 率3.89
2019年 柳田悠岐 5億7000万円(ソフトバンク)31歳
38試128打37安7本23点4盗 率.289
2019年 坂本勇人 5億円(巨人)31歳
143試555打173安40本94点5盗 率.312(5) MVP
2020年 柳田悠岐 5億7000万円(ソフトバンク)32歳
119試427打146安29本86点7盗 率.342 (2)MVP
2020年 菅野智之 6億5000万円(巨人)31歳
20試14勝2敗0SV137.1回 率1.97(3) MVP
2020年 坂本勇人 5億円(巨人)32歳
115試412打119安19本65点4盗 率.289(10)
2021年 柳田悠岐 5億7000万円(ソフトバンク)33歳
2021年 坂本勇人 5億円(巨人)33歳
2016年の黒田博樹はヤンキースでは1600万ドルを得ていたが、2015年に広島に復帰して4億円、そして翌年に6億円に昇給した。この復帰は「男気」と言われたが、広島にとっては目いっぱいの“誠意”だったのだろう。黒田はこの年限りで引退している。
坂本、柳田、菅野もすでに大台を超えている
なおここ近年では、国内組の坂本勇人、柳田悠岐も5億をオーバーした。また2018年、2年連続で沢村賞に輝いた菅野智之は、4億5000万円から6億5000万円に。2004年の佐々木主浩と肩を並べている。
これを眺めてわかるのは、NPBの「5億円以上」という年俸は「MLBの高額年俸との格差を調整する」ために設定されることが多いということだ。
NPBで5億円超は「採算度外視」的な側面も
国内でプレーする選手からも5億円プレイヤーが出てきたが、率直に言って「年俸5億円」は、今のNPBの経済規模では割に合わない。NPB球団の年俸総額は多くて50億円前後だ。好成績を挙げた選手全員に5億円を支払っていたら、球団がつぶれてしまう。端的に言えば「採算度外視でできる最大限の評価」であり「天井」だと言えよう。
日本初の5億円プレイヤーは前述のとおり2000年イチローの5.3億円だが、この年のMLBの最高年俸はドジャース、ケビン・ブラウンの1571万ドル。当時のレートで17億3000万円、その差は3.2倍ほどだった。
しかしMLBの年俸は以後、天井知らずで上昇し続けた。2001年にはレンジャーズのアレックス・ロドリゲスが2200万ドル、2009年にはヤンキースに移籍したアレックス・ロドリゲスが3300万ドル、2019年にはナショナルズのスティーブン・ストラスバーグが3833万ドルに。日本人選手の最高額は前述のとおり2004年に横浜の佐々木主浩、そして2019年に巨人の菅野智之が得た6億5000万円である。