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菅野智之がいる、いないにかかわらず 2021年の巨人が解決すべき“泣き所”とは【記録で12球団総括】 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2020/12/29 17:06

菅野智之がいる、いないにかかわらず 2021年の巨人が解決すべき“泣き所”とは【記録で12球団総括】<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

屈辱の日本シリーズ2年連続のスイープ。巨人はここからどのようにもう一段階上の強さを手に入れるのか

<今季の巨人、主要な救援陣 田口は救援成績だけ>
デラロサ 35試2勝0敗17SV 5HD 31.2回 率2.56
中川皓太 37試2勝1敗6SV 15HD 36回 率1.00
高梨雄平 44試1勝1敗2SV 21 HD 37.1回 率1.93
大竹寛 29試1勝2敗0SV 16HD 24.1回 率2.59
鍵谷陽平 46試3勝1敗0SV 13HD 37.1回 率2.89
大江竜聖 43試3勝0敗0SV 9HD 37.2回 率3.11
桜井俊貴 24試2勝4敗0SV 4HD 63.2回 率4.95
高木京介 17試0勝1敗1SV 4HD 12.1回 率3.65
田口麗斗 14試0勝2敗1SV 2HD 10.2回 率5.06
ビエイラ 27試0勝1敗0SV 2HD 24.2回 率3.28
高橋優貴 8試1勝3敗0SV 2HD 23回 率4.30
田中豊樹 31試1勝1敗0SV 1HD 27.2回 率4.88
澤村拓一 13試1勝1敗0SV 1HD 13.1回 率6.08

デラロサ、中川、大竹、そして高梨

 救援投手はたくさんいたが、信頼に足る投手は数少なかった。今季は2年目のデラロサがクローザーとしてまずまずの活躍である。左腕の中川は前年より30試合登板数が減ったが、ダブルストッパーのような起用で防御率1.00と驚異的な数字を残した。また先発から転向した大竹寛もベテランらしい投球で手堅い働きをした。

 しかし今季の巨人救援陣を背負ったのは、これもウィーラーと同じく楽天から移籍した高梨雄平だった。左のサイドスローという変則派で、左打者だけでなく右打者も圧倒、中盤で圧倒的なパフォーマンスを見せた。

 また昨年途中に日本ハムから移籍した鍵谷陽平も安定感のあるセットアッパーだった。

 こうしたシーズン中に加入した救援投手の重用は、自軍の救援陣に今一つ信頼がおけない原辰徳監督の意向を反映していると言えよう。

 巨人はスコット・マシソンや澤村拓一以来、数年にわたって活躍する救援投手を生み出せていない。適任者がいないというよりは、起用法に問題があるのではないかと思う。巨人ではくすぶっていた澤村拓一が、ロッテに移籍したとたんに水を得た魚のごとく活躍したことでもそれがうかがえる。

戸郷が日本シリーズで2番手登板したのが象徴的

 今年の日本シリーズで原辰徳監督は、菅野に次ぐ先発2番手の戸郷翔征を、先発が降板した後の2番手で起用した。短期決戦での特別の用兵かもしれないが、「先発投手は救援投手にすぐに応用が利くものだ」という認識を反映している。

 しかし近年に入って救援投手は“専門職”として確立され、安易に先発からの配置転換が利くようなポジションではない。そうした意識が、自前の救援投手を育成できない根源にあるのではないか。

 今後の巨人は有名無名の投手に関わらず、1イニングだけでも高いパフォーマンスを見せる「救援専門職」を養成していく必要があると思われる。

【次ページ】 ペナントの緊迫感のなさがスイープを生んだ?

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