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元巨人・高橋尚成45歳に聞く“プロ野球・契約更改のウラ側”「下交渉で初めて1億円と言われた日」
text by
谷川良介Ryosuke Tanikawa
photograph bySankei Shimbun
posted2020/12/24 17:06
ジャイアンツ時代は宴会部長としてオフシーズンも活躍していた尚成さん(2002年日本シリーズ祝勝会で原辰徳監督と) ©Sankei Shimbun
高橋 対処法は……ない。目に見えた数字をもとに球団が査定するわけなので、FAが近いとか特例がない限りは落とされる。でもそれはプロの世界だから当然のことです。もちろん、話術で下げ幅を少なくするのは重要ですよ(笑)。たとえば、リリーフをやっていた時は、実際に登板がなくてもブルペンで肩を作っている試合は多い。その部分をアピールしたりとか。
――納会の時に当時の代表だった清武(英利)さんに、先発復帰を直訴して意気込みを伝えたなんて話を聞いたことがありあす。
高橋 清武さんだけでなく、原監督にも直訴しました。今はどうかわからないけど、僕らの時は“下交渉”みたいなものがあったんですよ。話を円滑に進めるために、電話である程度、折り合いをつけてから契約更改に臨む。電話だと顔を合わせてないので選手側も「これでお願いしますよ~」と言いやすい。席に着いたら交渉のプロが目の前に座るわけですからね。
――なかなか1度の交渉で終わることは難しいわけですか?
高橋 いや、でも球団の人たちも早く仕事を終わらせたいわけです。多分、査定する方も嫌なもんだと思いますよ。年俸が下がって落ち込んでいく選手もいるわけですから、とても難しい仕事です。先日、中日の契約更改が話題になっていましたが、第三者目線で見ても今年はセンシティブな問題がありますよね。球団はコロナで収入が減っているでしょうし、一方で良い成績を残した選手が交渉するのは当然の権利なわけです。今後もこういうことが起きた時に一つの事例を作っておかないといけないので、僕は中日の選手たちに頑張ってもらいたいなと思いますね。
「ペタジーニが一番条件をつけていました」
――アメリカでは交渉事には代理人がつくと聞いたことがあります。
高橋 アメリカの場合は必ず代理人がいて、選手は交渉事には触れないのが常識。日本もそういう流れにしていかないといけないなと感じるのは、例えば何度も保留を重ねて年内で契約までこぎつけられなかった場合。ファンから見てもその選手にマイナスなイメージを持つと思いますし、年をまたぐと自主トレにも支障が出て、野球に集中できない。それを考えると交渉のプロに任せるのが賢明なのかなと思います。
アメリカの統一契約書は相当分厚いです。僕がまだ国内でプレーしていた時代の日本の統一契約書は1枚だけでしたが、アメリカでは100枚近くある選手もいるのではないでしょうか。それに目を通すのは代理人。選手から要望を出して、判別しながら交渉してもらえるから選手としてはとても心強い。選手・代理人・球団の三者でビジネスが成り立っているわけです。
――YouTubeでも「トレーナーをつける」「家族を連れて行く」など金額面とは別の条件のお話をされていましたね。