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苦しむ大迫勇也 それでも「ユウヤがいることが嬉しい」と指揮官が信頼&期待する理由
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/10/29 17:01
今季ブレーメンで本来の持ち味を出し切れていない大迫勇也。ここから逆襲となるか期待したい
大迫起用のメリットがデメリットよりあるか
大迫の起用を考えた際、ボール回りが良くなる、攻撃のリズムが改善される、得点力が上がるという「メリット」が、守備バランスが悪くなるかもしれないという「デメリット」を確実に上回る確信がなければ、起用には結びつきづらい。そして残念ながらここ最近のパフォーマンスでは、監督を納得させる説得力を欠いていると言わざるを得ない。
となると、リスク覚悟で攻撃的にシフトチェンジするときか、確実なプレーでリードを守るときか、あるいは前節ホッフェンハイム戦のように、フュルクルクが負傷退場するといった場合のスクランブル出場になってしまうのだろうか。
チーム作りの基盤として、コーフェルト監督はまず守備バランスを優先して考えている。無観客のスタジアムに響く指示やジェスチャーに注目すると、「レオ(・ビッテンコート)、中に絞れ」「ジョシュ(・サージェント)、いまだ! プレス! プレス!」「マヌ(・ムボム)、足を止めるな! 真ん中のスペースが空いている!」と、守備時のポジションとプレスのタイミングに対する声掛けがとても多い。
秩序立った守備はある程度のレベルまできているし、実際効果も出ている。昨季は5節終了時点の失点数が12だったが、今季はここまで7。バイエルンの8失点よりも少ない。得失点差が0というのは悪くない数字だ。
攻撃に物足りなさがある中で
一方、攻撃に物足りなさを感じていることはコーフェルト監督自身も言葉にしている。いまは正直、誰がFWでも前線へのパスが少ないし、サポートも少なく、遅い。それだけに攻撃陣へのテコ入れは、この先の課題になるのではないだろうか。
ボール奪取後の守備から攻撃への切り替えのスピードと頻度を増やし、ゴールに迫る質を高める。と同時に、攻撃にどのように変化を加えるかを考えていかなければならない。そのための選択肢として、コーフェルト監督の頭には大迫がイメージされているはずだ。
フライブルク戦後の記者会見でのことを思いだす。
「ユウヤが我々のチームにいることをとてもうれしく思っているんだ」と語った後で、「ディフィニティフ(間違いなく)!!」と力強く言い切っていたのが印象的だった。