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元冷蔵庫配達バイトのFW、DからAへ大出世監督…セリエA昇格勢の“苦労話”が熱い!
posted2020/10/28 20:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
歴史は新参者に厳しい。
過去10年の間に、セリエBからの昇格組としてセリエAへ挑んだ30クラブの内、14チームが1年で2部へ逆戻りした。残る16チームの半分も3年以内に1部から姿を消している。
どれほど2部で圧倒しようがセリエAはやはり別格で、昇格組が生き残るのは至難の業なのだ。
しかし、今季の昇格3クラブの中で最も戦力が劣るはずのスペツィアが健闘している。
開幕2戦目でセリエA初勝利を奪い、10月25日の5節パルマ戦では敵地で後半アディショナルタイムまで試合をリードした。
無念にも92分のPKで2-2のドローに終わり、試合後のイタリアーノ監督は「引き分けに喜ぶべきか怒るべきか。1部でやっていくにはもっと狡猾さが必要だ。うちは若い選手が多いから」と悔やんだ。
逆境だらけのセリエA初挑戦
1906年のクラブ創設以来となるセリエA初挑戦は、逆境だらけだ。
なにしろ昨季セリエBで3位だった彼らは、夏場の昇格プレーオフ決勝戦を終えたのが8月20日。リーグの恩情により開幕カードをずらしてもらったが、それでもコロナ禍による圧縮カレンダーの影響で、昇格決定から1カ月少々で初めてのセリエAに挑む戦力を急ぎ整えなければならなかった。
守備の要だったGKスクフェット(現ウディネーゼ)ら、レンタルで活躍した昨季の主力組は保有元に帰り、9月3日の新チーム初練習日に集まったのはたったの16人……。あの手この手の補強に費やした総額475万ユーロはリーグ最少レベルで、もちろん実入りはゼロ。
チームが抱える31人分の総年俸も『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙による毎年恒例の調査によれば、リーグ最低の総額2200万ユーロにすぎない。インテルで言うと、ちょうどFWルカク、MFエリクセン、FWサンチェスの3人分にあたる。
ただし、最弱の戦力でも指揮官イタリアーノは不満を見せない。