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ビエルサ、グアルディオラにポゼッションで上回りドロー 選手交代とマッチアップの妙を検証
text by
赤石晋一郎Shinichiro Akaishi
photograph byGetty Images
posted2020/10/15 17:02
雨の中での試合となったマンチェスター・シティ戦で指示を出すビエルサ(右)
ポゼッション率で上回った“史上7番目”のチーム
「現代サッカーにおいてはエンターテイメント性よりも、結果ありきのサッカーが優先されています。負けている時はもちろんのこと、勝っていても攻めるのがマルセロのサッカーです。相手が格上のシティで同点であろうとも、最後までアグレッシブに攻め続けた。その勇気や姿勢は、ゲームを見るもの皆を熱くさせました。ペップもまた、最後まで攻め続けました。まさに手に汗握る試合とはこのことで、従来のサッカーとは全く“別物”であると多くの人にも理解してもらえた試合だったと思います」(荒川)
試合を通じてのポゼッション率はリーズ52%に対してシティは48%。圧倒的なボール支配率とパスワークを武器に試合を支配するペップのチームに対して、リーズはポゼッション率で上回った“史上7番目”のチームとなった。ペップが12年間指導しているなかで、ポゼッションで上回られたのがヘタフェ、ドルトムント、リバプール×2、ウォルバーハンプトン、チェルシー、そして今回のリーズの7回だけなのだ。
昨シーズンの1試合あたりの平均ポゼッション率(2019/20シーズン)は、ビエルサのリーズ(当時はチャンピオンシップ所属)が64.1%に対して、ペップのシティは62.4%であった。2部リーグと1部リーグの違いはあったにせよ、ビエルサのチームが高いポゼッション率を保っていたことが数字からも伺える。
そして今回、エル・ロコは直接対決でも堂々とポゼッション率でペップのチームを上回って見せたのだ。パス本数でもリーズが425本(うち成功が350本)に対しシティが380本(うち成功が313本)と上回る。
試合後ビエルサは「どちらが勝ってもおかしくなかった。ただもし、我々が勝っていたら公平な結果とはいえなかったでしょう」と謙虚に語った。しかし、いわば“判定勝ち”という内容で、リーズはシティから勝ち点1を手に入れた。両者の選手の質を考えると、これは驚異的な事実ではないだろうか。
(後編 ビエルサ考案「4-1-1-1-3」の“ORIGINAL”な衝撃 「システムは10個」と豪語するワケ は下の「関連記事」からご覧ください)
荒川友康(あらかわ・ゆうこう)
サッカー指導者。アルゼンチンで複数のチームや滝川第二高校での指導を経て、ジェフ千葉・育成コーチ、京都サンガ・トップチームコーチ、FC町田ゼルビアトップチームコーチなどを歴任。ビエルサのみならず、Jリーグでもアルディレスなどの名将の元で働く。アルゼンチンサッカー協会認定のS級ライセンスを所持。FCトレーロス所属。
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