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ビエルサ、グアルディオラにポゼッションで上回りドロー 選手交代とマッチアップの妙を検証
text by
赤石晋一郎Shinichiro Akaishi
photograph byGetty Images
posted2020/10/15 17:02
雨の中での試合となったマンチェスター・シティ戦で指示を出すビエルサ(右)
あらゆる事に対するリスペクトが必要である
ペップとエル・ロコとの再戦はイングランド中でも注目の1戦となった。
プレミアリーグでは試合開始前、選手がピッチに跪きBlack Lives Matter抗議運動への支持を示す。ビエルサもまた、ピッチサイドに跪き目を閉じた。その厳粛で敬虔な姿は、多様性とボーダレスな価値観で構成されているフットボールの世界では、あらゆる事に対するリスペクトが必要である、と語っているようでもあった。
マンチェスター・シティはアグエロとジェズスという2人のCFを怪我で欠き、本来はWGであるマフレズをCFに配置してきた。しかし、他のポジションにはスターリング、デブライネ、ロドリ、ラポルト、メンディといった各国代表の主軸を担うスター選手をズラリと並べている。
一方リーズは、チャンピオンシップ(イングランド2部)を戦ったメンバーが中心のスターティングラインナップである。変更点はマンチェスター・シティからのレンタル選手である左WG(ウィング)ハリソンが、契約上マンチェスター・シティとの試合に出場できないため、アリオスキを代役として起用したことくらいだった。
1対1のマッチアップを明確にする形にシステムを変える
日本で唯一のビエルサ門下生である荒川友康が解説する。
「マルセロの4-1-4-1とペップの4-3-3は、システム論的には同義のシステムであると言えます。システム表記上のWGとSH(サイドハーフ)の位置が違うだけで、その役割はほぼ同じ。
同じシステム同士の試合を『ミラーゲーム』と言います。ミラーゲームにおいてはミスマッチが生じやすく、基本的には能力の高い選手を揃えたチームが有利とされている。ミスマッチとはマンツーマンデイフェンスにおいて、マークすべき相手が不明確だったり、複数人になってしまう状態を指します。マルセロは対戦相手の強弱に関わらず、相手システムに合わせて自チームのシステムをトランスフォーム(可変)させて相手に『適応』させるという手法を取ります。1対1のマッチアップを明確にする形にシステムを変えるのです。
マンチェスター・シティの3MFはアンカーにロドリ、インサイドハーフがデブライネとフォデンの2人で構成されています。それに対してリーズはロドリに対してロバーツ、デブライネとフォデンに対してはクリヒとフィリップスをマッチアップさせるシステムにトランスフォームしていました。つまりリーズは4-2-1-3にシステムを変えていたのです」