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ビエルサvs.グアルディオラ、「戦術的に信じられない」雨中の“美しい試合”の衝撃

posted2020/09/11 11:50

 
ビエルサvs.グアルディオラ、「戦術的に信じられない」雨中の“美しい試合”の衝撃<Number Web> photograph by MarcaMedia/AFLO

2011年11月、サン・マメスでのビルバオ対バルセロナ。グアルディオラ(左)とビエルサ(中央)が見つめるなか、“美しい試合”は行われた。

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赤石晋一郎

赤石晋一郎Shinichiro Akaishi

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MarcaMedia/AFLO

前編「“奇人”ビエルサ『その血が必要なのです!』、グアルディオラとの“11時間の議論”」(https://number.bunshun.jp/articles/-/844992)からの続きです。

 因縁深い2人の監督の素顔は実は対照的だ。

 ビエルサはヨークシャーの古い質素な一軒家に住み、練習場まで徒歩で通う。田舎道を悠々と歩くエル・ロコを発見すると、リーズファンはクラクションを鳴らし、車を降り握手を求める。ビエルサは丁寧にファンサービスに応じる。

 一方、ペップは世界最高峰の年俸を得て、ゴルフを趣味とする“サッカーセレブ”として知られている。

 ビエルサのファッションといえば、試合中もプライベートもジャージ姿が定番だ。英国パパラッチに撮られる写真も、ヨークシャーのスーパーマーケットでジャージ姿のまま買い物する庶民的な姿ばかりだ。

 ペップはアパレルブランドを経営する奥さんの服を華麗に着こなす。腕に巻かれているのは高級腕時計ばかり。ペップが愛用しているリシャール・ミルは1000万円を超える世界屈指のハイブランド時計だ。

「13歳の選手を10~15年かけて育ててみたい」

 その生活ぶりは、チーム嗜好にも現れているように感じられる。

 ペップのマンチェスターシティに所属するのはアルゼンチン代表のFWアグエロやベルギー代表MFデブライネ、イングランド代表FWスターリングといった一流選手ばかりだ。高いスキルを備えた選手を好むのが、ハイセンスでファッショナブルなペップ流なのだろう。

 一方でリーズの主力といえばチェルシー出身の期待の若手だったが、なかなか日の目を見ずにチームを転々としていた“流浪のFW”バンフォード、キャリアのほとんどを下部リーグで過ごしたチームキャプテンのDFクーパーといった決して一流選手とは言えない面々だ。

 まるで教員のようにジャージを愛用するビエルサの嗜好はプレイヤー選びにも現れている。

「マルセロが好むのは、教育甲斐のある若い選手です。育成を好む、といってもいいでしょう。実際に彼から『13歳の選手を10~15年かけて育ててみたい』と聞いたこともあります」(荒川)
 
 選手を成長させ、チームを成長させるのがビエルサのメソッドである。まるでハイブランドのショーウィンドーのように一流監督と一流選手が揃ったプレミアリーグで、平凡だが実直な選手を揃えたビエルサ率いるリーズ・ユナイテッドがどう立ち向かうのか。今シーズンの最大の見どころの1つと言っても過言ではないだろう

【次ページ】 ビエルサが“聖者”と評される所以

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