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異常だったリーガ移籍市場 動けないマドリー勢&バルサ、久保所属ビジャレアルは戦力充実
posted2020/10/15 06:00
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
この夏の移籍市場は異常だった。毎年選手名鑑を刊行しているナンバー編集部は大変な思いをしたに違いない。
いつもなら、裕福なビッグクラブはさっさと買い物を済ませてプレシーズンを始める。そこまでの経済力を持たないクラブはバランスよく売り買いを進めて、補強を概ね終えたところで開幕を迎える。そして台所事情が苦しいクラブは移籍期間の終盤に入ってから、ローンを利用して戦力をかき集める。
ところが、今年は持てるクラブも持たざるクラブもなかなか動かなかった。
いや、動けなかった。
リーガがそれぞれに定めたチームコスト限度額が高いハードルとなったからだ。
リーガ版フィナンシャル・フェアプレー
リーガ版ファイナンシャル・フェアプレーとも言える「チームコスト制限」はクラブの無謀な支出を止めるための規則であり、リーガの財政管理部がクラブごとに示す「チーム編成に費やしてもよい金額の上限」でもある。
計算は簡単。各クラブが毎年春ごろリーガに提出する翌シーズンの予算からクラブ運営コストと債務返済額が引かれるだけ。とはいえ、ここでいう「チーム」とはそれほど単純ではなく、次のすべてが含まれる。
・労働契約を結びトップチームに登録されている全選手および監督、アシスタントコーチ、フィジカルコーチ
・労働契約を結びトップチーム以外に登録されている全選手および監督、アシスタントコーチ、フィジカルコーチ、さらに、「コスト」には次のすべてが含まれる。
年俸、各種ボーナス、住宅や自動車貸与等の各種手当、社会保険料・年金、肖像使用料、契約を途中で解約した際の補償金、選手・監督等の獲得時に発生する諸費用(代理人への手数料を含む)、選手をローン移籍させる際に発生する諸経費、選手・監督・スタッフの登録費用。
いわゆるサラリーキャップより包括的と言えるだろう。