フランス・フットボール通信BACK NUMBER
バイエルンにフランス人が多いのはなぜ……ルンメニゲが振り返る「リベリーと別荘での2時間」
posted2020/09/23 08:01
text by
アレクシス・メヌーゲAlexis Menuge
photograph by
Getty Images
話題はバイエルンにフランス人選手が多く在籍するようになったのはどうしてか、クラブのマネジメントをかつてのスーパースターが手がける伝統がどうしてできたのか、さらにはクラブを運営していく際の理念などに及んでいく。なかでも筆者(田村)の興味を引いたのは、バイエルンとPSGの選手に対する考え方の違いだった。スターの獲得を優先するPSGと、才能と将来性を重視するバイエルン。その違いが、先日のCL決勝に端的に現れたように筆者には見えた。
ルンメニゲの言葉からわかるのは、バイエルンには世界の他のどこにも存在しない独自の文化・独自のDNAが存在するということである。【全2回の2回目/#1(https://number.bunshun.jp/articles/-/845074)から続く】
(田村修一)
印象に残っているフランス人選手は誰ですか?
――今、バイエルンには多くのフランス人選手(キングスレー・コマンとミカエル・クイザンス、ルカ・エルナンデス、タンギ・クアシ、バンジャマン・パバール、コランタン・トリソの6人)がいますがどうしてでしょうか?
「それがクラブの伝統になったことに誇りを感じる。道を切り開いたのはビセンテ・リザラズ(1997~2004年、2005~06年にバイエルンに所属)とウィリー・サニョル(同2000~08年)のふたりで、彼らはサイドの中心的存在だった。その上2人は強いパーソナリティを持ち、チームのメンタリティを強化するうえで大きく貢献した。彼らはクラブの歴史に刻印を残した。そのメンタリティとプレースタイルで、フランス人選手はバイエルンというクラブに見事に適応した。フランゾーゼン(註:ドイツ語でフランス人たちの意)には大いに感謝している」
――ブンデスリーガ全般でもフランス人は人気が高いですが……。
「フランスは現世界チャンピオンだ。ワールドカップは運だけで優勝できる大会ではない。だが、最も素晴らしいと思うのはフランスの育成システムだ。世界で唯一と言ってもいい。フィジカル、テクニック、戦術……、フランス人はあらゆる面を過不足なく育てている。だから20歳にしてプレーでも人格面でも成熟している。彼らの存在がドイツのクラブをより豊かにしている」
――この傾向は今後も続いていきますか?
「そう思う。もちろんフランス人選手は贈り物ではない。だが、彼らは、対費用効果の面でも素晴らしい。私たちはフランス人を尊重し、フランス人もまたドイツに心地よさを感じている。選手供給源としてフランスは特異な存在だ。ドルトムント時代から、私はウスマン・デンベレのプレーを見るのが大好きだった。私のお気に入りの1人で、だからバルセロナに移籍してからは、フィジカル面で様々な問題を抱えて限界を超えられないのが歯がゆくてならない」
――印象に残っているフランス人のエピソードは何かありますか?
「2010年にウリ・ヘーネスの別荘で、フランク・リベリーと彼の将来について2時間ほど話し合ったことがあった。フランクは代理人を連れずに1人でやって来た。代わりに一緒に来たのがクラブの顧問弁護士で通訳も務めたフランク・ゲーリンガーだった。話が終わり、フランクが帰った後でゲーリンガーはこう言った。
『彼が契約を延長することは絶対にないだろう』