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「ライバルチームを弱体化させる選手獲得はしていない」バイエルン会長が明かす“PSGとの関係”
posted2020/09/23 08:00
text by
アレクシス・メヌーゲAlexis Menuge
photograph by
AlainMounic/L’Équipe
2019~20年はバイエルン・ミュンヘンにとって実り多いシーズンだった。ブンデスリーガ8連覇に加え、ドイツカップも連覇。さらにチャンピオンズリーグも通算6度目の優勝を遂げた。しかもCLは、史上初の全勝優勝である。世代交代を推進し、シーズン途中に監督交代の強硬策を講じたクラブにとっては、望外な結果だったといえるだろう。
『フランス・フットボール』誌7月14日発売号では、そのバイエルンのカールハインツ・ルンメニゲ会長のロングインタビューを掲載している。このときはまだ集中開催のCL決勝ラウンドは始まっておらず、話題はもっぱらコロナ禍がクラブに及ぼす具体的な影響と、バイエルンとフランスの関係、世代交代を終えた今の状況とヨーロッパでも独自のクラブ哲学・理念についてである。
ルンメニゲとは12年にわたり親密な関係を築いているアレクシス・メヌージュ記者が聞く。【全2回の1回目/#2(https://number.bunshun.jp/articles/-/845075)へ続く】
(田村修一)
「話し合いで順位を決めることには絶対反対だ」
ブンデスリーガがコロナ禍による中断の後に再開し、無事シーズンを終えたこと、そしてバイエルン・ミュンヘンが8連覇を達成したことに代表取締役会長であるカールハインツ・ルンメニゲは大いに満足している。そしてフランスも、早々にリーグ打ち切りを決めるのではなく、慎重に再開の時期を窺うべきだったと考えている。
――コロナ禍がヨーロッパのクラブにどれほどの経済的な影響を与えると見ていますか?
「多くの国がリーグを再開し、シーズンを終えたことで2つの保障がなされた。ひとつはスポーツ面に関することで、リーグ優勝や来季のCL・EL出場権、さらには昇格・降格チームをピッチの上で決められたことだ。もう1つは経済的な打撃――とりわけテレビ放映権の払い戻しを最小限で抑えられたことだ。
思うにフランスは、リーグ打ち切りを決めるのが早すぎた(註:すべてのリーグが中断しながら状況の推移を見守るなか、フランスは4月30日に10節を残しながら早々にリーグの打ち切りを決めた)。その結果、最終的な順位を話し合いで決めることになり、それが多くの軋轢を生んだ。ブンデスリーガはコロナの規制を遵守しながら、世論のサポートを受けて6月30日に全日程を終了できた(註:5月16日、ヨーロッパのプロスポーツのなかで最も早く再開した)。リスクを犯した対価は十分に支払われたと言える」
――フランスが打ち切りを決定するに至った経緯はご存じですよね。
「ドイツから見たとき、フランスの状況をどう判断したらいいのかは難しい。感染はドイツよりフランスの方がずっと深刻だった。政治的な決定を下した人々は慎重にことを進めたかったのだろう。だが、最終的な決断は、もう数週間後でよかったと思う。イタリアもスペインもイングランドも、感染拡大が鎮静化するのを待ちながら、再開のためのコンセンサスを世論との間で作りあげていった。恐らくフランスは、自分たちの決断が周辺諸国への模範になると考えたのだろう。
だが私は、話し合いで順位を決めることには絶対反対だ(註:中断前の28節に未消化試合がひとつあったため、最終順位は総勝ち点ではなく1試合平均の獲得勝ち点で決められた)。